3611手間
一先ず魚卵の燻製は、ワシらの下だけに献上されることとなり、会食などで他の貴族が欲しがるのであれば、そちらにも販路を広げることとなった。
平民が同様のものを先に食べているが、殆ど港町だけで流通していること、時期などで確実に手に入るわけではない、最高品質のモノだけをと希少性を出せば、気位の高い者も問題ないだろう。
「しかし、もし人気が出たとして、直接買い付けに行く者が出るのではないかい?」
「それは大丈夫じゃろう。これを作っておるのはドワーフじゃからの、庶民が食べておる品質の物なればともかく、ドワーフたちが自信を持って最高品質じゃと言える物はワシの許可なく買うことは出来ぬからの」
ドワーフたちはワシの庇護下に居るので、彼らの成果物は対外的にはワシの物となっている。
なので無理矢理買ったり奪ったりという事は、ワシを敵に回すことと等しいので、まともな考えを持つ者たちならば、愚かな行動はしないはずだ。
「新しく来た貴族なんかは、セルカの恐ろしさを知らないだろうし、抜け道があると考えるのではないかな」
「王太子妃という肩書にも臆さぬとなれば、それはもう叛逆の芽があると考えてよいのではないかの」
「確かにそうだが、そういう事をする愚か者は、庇護下ではなく御用達とでも勝手に勘違いしてるような気がするんだが」
「んむ、今まで見た愚か者たちは、何故か手前勝手に都合の良いように勘違いして動くからのぉ……」
とはいえそういった輩は、そんな勘違いで利己的に動くだけあって、往々にして身分が低い。
なのでそういった輩を引き込んだ寄親の貴族たちに罰則を与えることにすれば、上の者たちが頑張って彼らを抑え込んでくれることだろう。
「上の者たちは、流石にセルカの恐ろしさを知っているだろうからねぇ」
「文字通り潰されてはかなわんと、張り切って勝手に取り締まってくれることじゃろう」
前々からここに住んでいる者たちは、良くも悪くもワシのやって来たことを知っている者たちで、ワシがどれだけの力を振るえるかよく分かっている。
特に入植した際に共にやって来た貴族たちはよくよく理解している、更に上から抑えてくれるであろうし、ワシらが今から気にすることでもない。
「それにしても、報告は受けてはいるものの、港町はかなり予想以上に発展していそうだね」
「そうでなくては困るがの、しかしふむ、また視察しにいくのも良さそうじゃな」
「ならその時は一緒に行こうかな」
「ふむ、それも良さそうじゃな」
ならば早速とクリスは文官に視察の調節をするように指示を出し、文官は一瞬難しそうな顔をするものの、発展具合を直接視察する有用性はよくよく分かっているのだろう、すぐに表情を引き締め頷くのだった……




