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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3609手間

 試食の為にとクリスの前に置かれたのは、ワシに饗された物と同じ、簡単なソースがかかった魚卵の燻製をスライスしたものが一皿。

 そしてもう一皿、こちらは表面を軽く焼いたのか少し焦げ目がついており、その為かこちらは少し厚めにスライスされている。


「ほう、こっちは炙っておるのかえ?」


「あぁ、こうすると生臭ささが薄れるから、魚が苦手な奴も食べやすくなるんだが」


「だが? だがなんなのじゃ」


「食感がかなり変わるから、そっちが苦手な奴にはつらいかもな」


「ふむ」


 もともとその見た目通りにややねっとりとした食感なのだが、火を通すことによってねっちょりとした食感に変わるらしく、ドワーフの間でもその食感でハッキリと好悪が分かれているらしい。

 

「なるほど、しかし、この元々の食感も苦手な場合はどうするんだ?」


「それなら削って食べると良い。ただまぁ、削れば当然それ単品で食べるのは無理だから、何かにかけて食べるのがいいかな」


「なら削ってスープに入れるのはどうだい?」


「あー、それはお勧めしないな。煮込んだら溶けちまうし、削って浮かべてもどちらにしても生臭さが強調されちまって、あんまり旨くないんだ」


 ドワーフの言う通り、確かにこの魚卵の燻製は湯によく溶けそうな見た目であり、実際簡単に溶けるそうだがそうなると魚独特の生臭さが際立つだけで、あまり美味しくないらしい。

 

「後は多分いらん心配だと思うんだが、そのままがいいか炙りがいいかで争いが起こる」


「ほんにおぬしらは、相変わらず変なところで喧嘩しておるのぉ」


 ドワーフたちはちょくちょく変なこだわりを発揮して、今回でいえば炙りか否かで殴り合いの喧嘩をしているらしい。

 とはいえドワーフたちも一応は弁えているようで、喧嘩をしても怒られないような場所でドワーフ同士でのみ争っている。


「周りの者たちは巻き込んでいないんだね?」


「もちろんドワーフだけでやってる。流石にヒューマンどもを殴ったら、ぽきっと簡単に折れちまいそうだからなぁ」


「そう思われても致し方ない……か?」


 ドワーフの背丈こそヒューマンの子供くらいしかないが、その腕の太さはヒューマンの脚ほどある。

 当然膂力も見た目通りなので、そんな腕で殴られればヒューマンなど一たまりもないだろう。

 無論、近衛たちのように鍛えていたりすればまた別かもしれないが、それでも大怪我は免れない。


「ある程度弁えておるようじゃが、喧嘩は喧嘩、いちいちおぬしらが騒ぐたびにワシの下に報告がやって来ることを忘れるでないぞ」


「分かってる、だから最近は俺たちだけが居る場所でやってる」


 ドワーフたちの喧嘩はお互い怪我をしないよう注意はしているらしいが、はた目から見ればかなり激しい殴り合いをしているように見える。

 なので当然それを見かけた庶民が通報するので、その報告がワシの下にまでやって来る、だからあまり喧嘩をするなと言ったつもりだったのだが、ドワーフたちは自信満々に見えないところでやってるから大丈夫と言い切り、ワシはこめかみを押さえ通報される事態にならないのならばいいかとため息とともに釘を刺すのを諦めるのだった……

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