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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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1074手間

 ワシの感覚では二日、赤蜘蛛と懲罰部隊の襲撃から過ぎたが今のところやつらが襲ってくる気配はない。

 そこで分かったことだが、意外にもというと失礼かもしれないが、ドワーフたちにも昼夜という概念があった。

 無論、地下なので陽が昇り陽が沈みということではなく、ただ単に時間の区切りとしての昼夜だ。

 ただ、それも実に曖昧な区分で、朝と夕の二度、朝に一回と夕に二回鐘が鳴るというもの。

 長老曰く、大昔は昼夜など無く好きな時に起きて、好きな時に寝るという実に羨ましい生活をしていたそうだが、当然そんな生活をしていたら個々人で寝る時間も起きる時間も変わって来る。

 そこで問題が起きた、ドワーフたちは起きたら採掘や細工をして過ごし、気が済んだら寝るというサイクルだったのだが、細工には槌を使う、槌を使うということは音が出る、しかも広いとはいえ地下空間よく音が響く。

 つまるところ寝るやつが五月蠅い寝れないと文句を言い出した、正直その文句を言ってる奴も起きてる間は同じことしてるはずと思うのだが。

 それで喧嘩が耐えず、じゃあいっそ時間を決めようということで、まだ地上の者と交流があったらしい当時のドワーフたちは、地上の昼夜という概念を取り入れたそうだ。


「それで音が出る作業は、朝の鐘と夕の鐘が鳴るまでの間だけということに決まったんだよ」


「ほほう、なるほどのぉ」


「こういう話は伝わっているのに、その頃交流のあった地上の者と交流が無くなったのかは、何故か伝わってないんだよなぁ」


「先の話は戒めにもなるし伝わっておるのじゃろ、交流が無くなったのも、地上かドワーフかどちらかの恥になるような理由じゃったら、わざわざ伝える意味もなかったのではないのかの? 誰しも自分や人の恥を後のもんに伝えたくはなかろう」


「たしかに、それもそうだな。ところで、飯は食わんのか?」


「いや、石を食えるのはおぬしらドワーフだけじゃよ、流石にワシも石は食えぬ」


 二日も居れば当然彼らも食事をとる場面に遭遇する訳で、ワシはその場面に食卓とは知らされずにお呼ばれしたのだが、最初食卓だと気付かずなにか鉱石の選別でもしているのかと思った。

 しかし、ドワーフたちが石を食べるのは知ってはいるし昔見たことはあるものの、まじまじと見たことは無く、目の前でスナック菓子でも食べるかのようにポリポリと石を食べる様は違和感が拭えない。

 

「だが食べねば辛くはないか?」


「いやいや、気遣いは無用じゃ、ワシはひと月飲まず食わずでも平気じゃからの」


「ほう、地上の者は凄いな」


「いや、これもワシだけじゃ、普通の者はせいぜい一日二日が限度じゃよ」


 ワシはひらひらと手を振りながらそう言うと、この場で唯一口にできる酒を飲む。

 どうもこの二日間、飲まず食わずなワシを心配して、地上の者の舌は分からぬからと、石も酒も味に癖のない物を選んで出してくれたらしい。

 石の味などワシには分からぬので、癖の無いというのは長老の口から聞いたのみだが、酒の方は確かに度数は高いが味に癖の無い少し薬草のような風味のする蒸留酒だ。


「ほう、これは美味いのぉ。度数が高いから飲むものは限られるじゃろうが、地上でも人気が出そうじゃ」


「そうかそうか、嬉しい評価だが、流石に交換に出すほど余裕は無いな、なにせ全部俺たちで飲んじまうからな」


 自分たちのモノを褒められて嬉しいのは誰でも一緒、長老が顔を綻ばせ豪快に笑う。

 しかし、そんな和やかな時間も長くは続かず、ドタドタと駆け込んできたドノヴァンによって終わりを告げるのだった……

 

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