1071手間
このたび捕虜にした懲罰部隊のドワーフたちは、長老自ら今尋問しているので、待っている間にドノヴァンと話しているのだが、やはりというか彼は地上に興味があるようだ。
ただ彼が次期長老であり、兵隊という程の大規模でも厳格でもないが人を率いている立場上、採掘、細工、酒にばかり興味が向くドワーフに珍しく、地上の政治なども気になるようだ。
「地上では今回のような戦の時は、どういう風に手打ちにしてるんだ?」
「ふぅむ、まずはドワーフがどういう風にしておるか聞いても良いかの?」
同じだったら話す意味はあまりない、全く違う面白いやり方であれば、それはそれで話のタネになる。
質問に質問を返すようで悪いが、ワシはまずそうドノヴァンに聞いてみる。
「喧嘩とかならば幾らでもあるんだがなぁ、今回みたいにお互い死人が出るような戦ってのは、先代や先々代の話にも出たことがないんだよ」
「なるほどのぉ。そうじゃな、大抵は何度か戦った後になるが、偉い者同士で話し合って手打ちとすることが多いかの」
「話し合いで決着になるなら、最初から戦わなければいいんじゃないか?」
「確かにその通りじゃがのぉ、話し合いで有利な条件を取り付ける為にじゃな、と言ってもそれはある程度対等な相手の場合ではあるがのぉ」
「ということは、俺たちの場合も話し合いをするのか?」
なるほどと、光明が見えたように期待に満ちた目をこちらに向けられても困る。
話し合いと言ってもほのぼのしたモノではなく、戦に次ぐ戦で疲弊し戦が長引かないようにと出来た不文律。
何とも皮肉な不文律ではあるが、当然平気で反故にする者もいるし、そもそもローカルルールのようなモノなのだから、こちらのドワーフが応じるかどうかも謎だ。
「それが良いじゃろうが、今のままでは無理じゃろうのぉ」
「どうしたらいいんだ?」
「簡単な話じゃ、戦って勝てば良い」
「んん? それだと話し合いは要らないんじゃないか?」
「いやいや、必要じゃよ。むしろ勝ったからこそ話し合いを設けれると言っても良い」
「だが、勝ったのならばそこで終わりじゃないか?」
納得がいかないと首を捻るドノヴァンに、ワシも内心首を捻るが、そういえば戦なぞ無くせいぜいが喧嘩止まりと言っていたなと思い出す。
「喧嘩なぞの少人数であればそうじゃろう、しかし、何十人、何百人、時には何千何万ともなる戦ではそうはいかぬ、全部倒すか? それは常道では無理じゃろう、どちらかが倒れるまでやれば分かりやすいが、それでは勝った方も早晩倒れるだけじゃ」
「う、うぅむ、規模が大きすぎて想像が追い付かん」
「喧嘩とてどちらかが死ぬまで殴るかえ? そんな事はせんじゃろう、誰かが仲裁するかなぞして喧嘩が終わるが、ある程度はどちらかが上と示さねば近いうちにまた同じことで喧嘩になるじゃろ、それが戦では少々大袈裟になるだけじゃな」
「なる、ほど?」
ドノヴァンはいまいち理解できていないようだが、ある程度向こうを屈服させないとこの戦は終わらないだろう。
何せ今まで戦も無くやって来ていたドワーフたちが突然戦なぞ血なまぐさいことを始めたのだ、地上を征服するだの嘯いていたらしいが、何故そんな突飛なことを言い出したのかが気になる。
とはいえ今考えたところで答えに行きつく訳もなく、どうせ最終的には引きずり出さねばならない相手なのだから、その時に聞けばよいかと今だ悩むドノヴァンに別の話題を出し話を変えるのだった……




