1068手間
呆れた表情でやって来たドノヴァンは、長老を諫めるようなことを言っているが、その視線が既に元に戻っているというのにワシの左腕に注がれていることから、内心は長老と変わらないのが明らかだ。
「ところで、これはいつになったら消えるんだ? 出来ることならさっさとこいつらのことを片付けて、赤蜘蛛の処分をしたい」
「ワシが望まぬ限りは、ワシが炎に込めたマナが尽きるまでは延々と燃え続けるのぉ」
「んー、それなら先に赤蜘蛛を処分するのもありか?」
すぐに消えないとワシが言えば、ドノヴァンは腕を組んでそう溢す。
当然といえば当然だが、放置すると公然と言われた懲罰部隊のドワーフたちは「ふざけるな」などと叫んでいるが、まるっとドノヴァンは無視するようで一瞥だにせず、他のドワーフたちに赤蜘蛛の処分を指示し始めた。
「そういえば、どうやって処分するのじゃ? この場で焼くのかの?」
「いや、流石にそれは不味い。死んだら臭い袋は問題無くなるんだがな、焼いたら焼いたでその臭いに釣られて色々集まって来ちまうんだよ、それ以前に煙が充満してやばいが」
「ほう、ではどうやるのじゃ?」
ドノヴァンの言う通り、閉所で焚き火でもすれば煙のせいで大変なことになるのは当たり前だ、くべる薪が蜘蛛の死骸となればその臭いなども想像すらしたくない。
「この近くに深い峡谷に続く道があるんだがな、その峡谷に落とすんだよ」
「落とすだけかえ? それでは深いと言うてもいつかは埋まってしまうのではないかの?」
深いと言っているがワシより小柄なドワーフの言う深いだ、すぐに一杯になってしまう未来しか見えない。
「それに関しては大丈夫だ、何せそこに溶岩の川が…… あー、信じられないかもしれないが燃えている川がなあるんだよ」
「いや、溶岩は知っておるのじゃ、それにしてもこんな浅いところに溶岩が流れておるのかえ」
天然の焼却炉といったところだろうか、それにしても地下に溶岩があるのはいい、むしろ当たり前だ。
しかし、火山地帯でも無いというのに、こんな地表付近に溶岩が湧出しているというのは気になるところだ。
もしかしたらカカルニアの火のダンジョンのような施設から溢れ出てきているのだろうか、ドワーフが居座るくらい鉱物資源が豊富なのだから自然にという可能性の方が高いのだが。
それでもやはり、色々と見てきたせいで不安になって来る。
「理由は分からん、熱さに強いのが俺らの自慢とはいえ、流石に溶岩に近づくのは無理だからな」
「ま、普通はそうじゃろうのぉ」
ワシが普通はといったところでドノヴァンがややうろんげな目をワシに向けるが、努めて無視して赤蜘蛛の死骸へと目を向ける。
近いと言っても赤蜘蛛は馬ほどの大きさもある、虫だから見た目より軽いかもしれないが持っていくのは大変だろうと、左手を一振り狐火で濡れた布巾で埃を拭い取るようにきれいさっぱりと、赤蜘蛛の死骸を焼き尽くすのだった……




