1067手間
蒼い炎の壁で作った即席の牢獄に捉えられ戦意を失ったと思っていたが、懲罰部隊だけあって反骨精神が旺盛な何人か気合いの入った奴らが居たらしく、壁越しにワシを魔導銃で撃ってくる。
その反骨精神あふれる奴らであるが、何発か撃ったところで弾丸がワシに届くどころか、完全に炎の壁で止まるのを見て歯ぎしりしているところ、回廊の上から声が降って来る。
「おい、そんなモノ出して大丈夫なのか!」
「ん? 大丈夫じゃぞ」
炎の光で煌々と照らされた長老が、回廊から身を乗り出し聞くので答えれば、長老は軽い身のこなしで手すりを飛び越え、階段を使うことなく階下へと飛び降りてくる。
ドスドスドスとワシの近くまでやって来ると、興味深そうにあご髭を触りながら炎の壁を眺めている。
「何だこれは、これだけ近付いても熱くない」
「熱くはないじゃろうが、触らんようにの。ただ単に熱を内側に閉じ込めておるだけじゃからの」
「そうか、ふむ……」
流石に炎扱うことの多い種族だけあって、ワシが忠告するまでも無く、炎の壁に触ろうという気配すら無い。
しばらく炎の壁を眺めていた長老だったが、色こそ違うだろうが炎なぞさして珍しいモノでも無く、興味を失ったのかくるりとワシに向き直ると、好奇と興奮を抑えられない様子でワシに詰め寄って来る。
「それよりもだ、何だその左のそれは」
「ん? あぁ、脅しにでも使おうかと思うておったが、結局使わんかったのぉ」
それもそうだろう、薙刀よりも間合いの広い武器を持っているのだ、それも自分たちの方が人数も多いとなれば警戒こそすれ恐れる訳がない。
そんな風に考えながら薙刀を消し腕を元に戻せば、あからさまに長老が目の前でおもちゃかお菓子を取り上げられた子供のように顔を歪める。
「そんなことを聞いたんじゃぁない、何だあれは鉱石か鉱石なんだろう? どうやって取り出した、いや、どれだけの量を持っている!」
「お、おぉう、まてまずは落ち着くのじゃ」
自分で何を言っているのか、自分でも理解してないのではないかと思うほどの剣幕で長老はまくし立て、ワシの肩をがっしりと掴んで前後へと揺すりはじめる。
その程度でどうにかなるワシではないが、立派な髭が無ければ今頃ワシは唾まみれになっていそうなほどの口角泡を飛ばす長老の様子に、流石にワシは嘆息しその両腕を握りギリギリと力を込めながら引きはがす。
ワシに腕を握られた長老は苦悶の声をあげ、よろりと一歩足を引くとそのままワシの前に跪くように頽れる。
「ちっとは冷静になったかの?」
「あ、あぁ、すまない、が…… 腕が折れるかと思った」
流石に今のは自分が悪いと思っているのか、長老はワシが握りしめた場所をさすりながら素直に謝罪する。
そこへワシらのやり取りを見ていたのだろう、灯りを持った者たちを引き連れ、やや呆れた様子のドノヴァンがやって来るのだった……




