29.革命家にジョブチェンジ
「はあ…。」
ものすごい音がしたから様子を見にきたら案の定だ。くるまっていた毛布は燃え滓になり、ジュードは頭から血を流している。
「兄ちゃん、ごめん…。」
謝るな。今までにない状況にいたのに目を離した俺が悪い。
「なんかあったら呼べと言ったろ?遠慮すんなよ。」
「それよりっ…!俺、わかったかも!」
「何の話だ?」
「あいつは俺を殺せない!だから俺は1人でも大丈夫。兄ちゃんは自由でいてもいいんだ…幸せになっていいんだよ…だから、結婚も。」
何言って…
「俺がいるから結婚してないんだろ?でももういいんだ。大丈夫。兄ちゃんがいなくても俺は殺されないから、だから…」
胸がギシギシと音を立てたような気がした。全部気持ちを見抜かれていた。俺は、俺の独り相撲でジュードを傷つけていたのか。いや、今は、そこは落ち着こう。それよりも、あいつがジュードを殺せないとはどういうことだ?
「お前を殺せないってどういうことだ?」
「あいつが魔力を吸い取ろうかって聞いてきたんだよ。で、断ったら、嫌がらせをしてきた。それでおかしいなって思った。勝手にすいとりゃいいじゃん、こんなの。そんで、よく考えたら、俺なんか殺して体乗っ取れるのに何でやらな…あっ…ぐぅ…!」
ジュードが苦しみ出した。あいつが邪魔をしてる。こんなに露骨に表層に出てくるほど…つまり焦っている。図星だってことだ。
「ジュード、ちょっと耐えててくれ!ミリアムさんを呼んでくる!」
「なるほどね。」
ミリアムさんが魔物とジュードを眠らせた。
「確かに、リミッターに魔力を注いだ時もジュードは体を取られると恐れていたが、結局そうはならなかった。」
ミリアムさんは頷いて話を引き取った。
「ジュードくんが自ら死ぬか…体を開け渡すと許可しなくてはあいつは表に出られない。」
「うん…もしそうなら、俺の体でも…。」
「オリヴァーくん…。」
ミリアムさんには前に話をしていたことだ。
全てが終わった後、式典で全てをぶちまける。国が俺達を拿捕しようとする、或いはもっと悪いことをしようとする、その時にジュードが魔力を解放しようとする、それで怯む…怯まなかったら?
怯まなかったら、魔物と取引をする。
ジュードを解放する代わりに俺の体を使え、と。
「あの時、それができるとして、やったら君は死ぬかもしれないと言ったが…。」
「俺が自ら死ななければ死なない。」
ジュードは三十年間、ずっとそれをやってきた。俺にもできるはずだ…いや、やらなくちゃいけないんだ。あの時、ちゃんと守れなかった。その後もどうすることもできなかった。リミッターのアップデートという強い後ろ盾がある今回は最初で最後のチャンスだ。俺があいつの力を俺が得て、この国に復讐する。
「私は若い子が自らを犠牲にしていく姿を見るのが嫌いでね。」
ミリアムさんがゆっくりと口を開いた。
「それは何度も言っただろ?俺はこの国を…今の歪なこの国を滅ぼしたい。それは俺の意思で犠牲でもなんでもないって。」
「でも命を課すことには代わりない。それが私は嫌なんだよ。」
「いや、それはそうだったけど、ジュードのいう通りだったらその可能性はなくなったってことじゃん。」
ミリアムさんはしばらく考えていたが、ふいに明るい調子で言った。
「少しその話は私に預けてほしい。」
「預ける?」
「君達の旅に同行して良かったよ。」
ミリアムさんが楽しそうに言う。
「何?急に。」
「今ね、色々考える材料が揃って、私のこの天才的な脳みそがフル稼働しているんだ。」
また始まった。いや、実際その脳みそに頼ってばかりいるから間違っちゃいないが。
「君の…いや、君達の復讐をもっと楽しいものにできるかもしれない。」
「楽しい?」
ミリアムさんはニヤリと笑った。
「あの時、君の覚悟を聞けたのは本当に良かったよ。今のアリステリア王国を壊して…作り変える。私たちはあの時から革命家にジョブチェンジしてるってことだ。」




