28.可能性
「気持ち悪い…。」
あんなに大量の魔力が当たり前にある環境は初めてで、体に流れ込むのを防ぐことはできないし、魔力が大きすぎて、放出したらあいつの力が抑えられる気がしない…いや、力どころかあいつを抑えられなかったら…。
「二日酔いみたいなもんだろうなあ。酒なら寝てりゃあ抜けるが魔力ってのはどうなんだろうな…かと言ってこの後リミッターに注入するのに抜けすぎで困るしなあ。」
兄ちゃんが心配そうに俺の顔を覗き込んでる。
「俺ぁ魔力ないからわかんねえなぁ。」
己を無力だと責め、申し訳ないと思っているのが伝わってきて、こちらこそ申し訳ない気持ちでいたたまれない。
「う…とりあえず寝れば何とかなるから…。」
本当のところはわからないけど、これ以上不安げな兄ちゃんの顔を見るのが心苦しくて、俺は毛布にくるまって背を向けた。
「そうか?まあ、なんかあったらすぐに俺を呼べよ。」
兄ちゃんは後ろ髪を引かれるような思いを言葉に滲ませて、それでも俺が休めるように気を遣って席を外した。
「はーい…。」
兄ちゃんが立ち去ってからしばらくの後、あいつが頭の中で喋り始めた。
「辛そうだなあ?俺なら楽にできるぜ?」
頭の中に不快な嘲笑が響く。
「何をする気だ?」
「俺ならこの程度の魔力は全部飲み込める。」
冗談じゃない。これだけの魔力をこいつに与えたら俺は抑えきれない。
「そんなことしたら、お前、俺を乗っ取るだろ?」
「よくわかったな。でもどうするつもりだ?このままじゃずっとそんな風だぜ?」
「お前にいうつもりはないよ…うっ」
そう答えた瞬間、頭が割れるように痛くなり思わず息を呑む。くそ、また嫌がらせかよ…こんなことしてるくらいなら勝手に魔力でも何でもすいとりゃあいいのに…
あれ?
何でやらないんだろう?
いや、それだけじゃない。
何でこいつは強引に俺の体を乗っ取らないんだ?
いつも俺に死ねとは言うが殺すことはしない。
苦痛は与えてくるが殺しはしない。
もしかして…できな
「あっ!がぁっ!」
「やめろっ!考えるな!くそがっ!いいから死ね!さっさと死ね!死ね!死ね!死にやがれっ!諦めろ!この出来損ないの死に損ないが!」
あいつの怒号と共に急激に体の内側が燃え上がるように熱くなった。
「ゔゔ…」
見る間に体中の傷から炎が上がる。
「やば…毛布…このままじゃ…」
俺は力任せに床に頭を叩きつけ、そのまま意識がなくなった。




