21.南へ向かおう
リミッターの新しい魔力受動体はリミッターの中央部でゆっくりと回転しながら安定した青白い光を放っていた。
「完全に安定したようだな…しかし、マジでジュードの魔力はすげーな。ここまで軌道に乗せるには相当な魔力が必要なんだぜ?」
ロッドがリミッターを愛おしそうに眺めながら言った。
「えあ…ど、どうも。」
ジュードが顔を真っ赤にしながらもそもそと答えた。
「んで?この後どうする?」
俺が聞くとジュードは地図を広げて答えた。
「うん。次はサウティシアに行く。グルーっと回って最後にセンティシアに戻るように進む予定。」
「サウティシア!やった!リゾートだ!」
「また兄ちゃんは…。」
サウティシア。常に暖かい南国リゾート。甘ったるくて色とりどりフルーツの産地でそれらを利用したスイーツや酒が楽しめる。また、暑いせいか名物料理は辛いものが多く、珍しい香辛料も手に入れやすい。
「いや、俺が楽しんでるのはもちろんだけど、ここのレシピや食材手に入れるとカフェの目玉にできるんだよ。何せノーティシアとサウティシアは対極だからな。」
「意外にビジネスしてるんだな。」
ミリアムさんがポツリという。
「意外にって何だ?ガイドブックに載せなくても賄えるくらいには俺ぁ経営手腕あるんだぜ。」
「ごめんよ、馬鹿にしてるとかではないよ。これまでの君のイメージと違うなって意味だ。」
四十過ぎまで小さいとはいえ己で牧場を切り盛りしてきている男にどんなイメージを持っているんだ。
「まあでも、今回はそうそう浮かれてもいられないよ。サウティシアの気候だと冷却装置を作らないといけない。」
「これにはファンをつけていたよね。空冷ってことだろ?それじゃあ冷やしきれないってことかい?」
「まあ無理だろうな…水冷にする必要がありそうだ。」
水冷にするってことは、水を循環させる必要がある。蒸発する分もあるだろうし、それも自動で感知して適宜汲み上げるようにするとなると、温度管理、水量管理、そして汲み上げポンプと必要な魔道具もここより増える。
「サウティシアが温度管理が必要なら対極となるノーティシアもそうなるってことか?」
「そうだな。逆に冷えすぎの予防が必要になる。」
「なるほどなあ。今までそんなこと考えたこともなかったよ。ここの洞窟も向こうの地乗りのせいで魔力の枯渇や地盤の緩みがあるとか想像もつかんかったし…。」
そういうことをもう少し俺が考えてればジュードも楽だったかもしれない。思えば堅苦しいのが嫌だとか国の方針が気に入らねーとか、俺が子どもっぽい事に拘って、いや、もっと言うなら、奪われた十二歳と七歳以降の本来兄弟二人が過ごすはずだった時間を取り戻させろという気持ちもあって、この二年に一度の旅に一度も他人を同行させなかった。それが仇となって、ジュードにいらん苦労をかけてたかも…。
「どうした?オリヴァー。」
ロッドが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「いや、旅の仲間って必要だったんだなって思ってな…ごめんな、ジュード。」
俺は詫びる気持ちでジュードの肩に手をかけたが、ジュードは訳が分からずオロオロしているだけだった。
「は…?え…?」
「そういえば、ウェティシアの名物料理を食ってねえな。ミリアムさん達、どっかいい店知ってる?おすすめがあれば覚えてカフェで出したいんだが。」
ミリアムさんとロッドが顔を見合わせて、うーんと唸ってる。
「意外と地元民って名物食わねーのよな。いつも行く定食屋くらいしか教えらんねえぜ。」
「そこ、美味いのか?」
「俺的にはウェティシアで1番だな。」
「よし!じゃあそこ教えてくれ。」




