糾弾
ほんっっとうに遅れて申し訳ありませんでした!冬休みに入ればもう少しペースが早まるかと思っていたのですが、私は重要なことを見落としていたのです。そう、冬休みだと午前中寝潰してしまうという単純すぎる弊害!
一日の長さは半減し、投稿ペースが実質二倍化するのは必定!授業中もラノベ書いたりしてたので、正直学校があろうとなかろうとそんなに変わらない事にも気が付きました……。ですがもう一作が終われば、流石にもう少しペース早まると思います!お待ちあれ!
鎧を纏っているカミルの体は元々重いが、今日は一段と重く感じる。
自らの利益を優先し、秘密裏にソーレイと魔獣討伐を目論んで失敗。カミルには前回の遠征でも敗走した経緯もあるので、今回の会議ではさんざん責められることになるだろう。
「くそう、ソーレイさえ生きていれば……!」
ソーレイの体を支配することさえ出来れば責任を分散させることも出来たが、彼女が自殺してしまったせいで事前に立てていたプランは全て意味を為さなくなった。
八つ当たりとしか言えない怒りに苛まれていると、隣からジークが心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫ですか、カミル様? やはり私が代役を務めた方が……」
「あぁ、すまん。先が思いやられただけだ」
今回の問題は俺一人に留まらないため、騎士団副団長のジークも勇者会議に同伴する。この勇者会議では、騎士団全体の価値が問われるだろう。
「そんなに心配するな。会議が始まれば、なんとかやり切ってみせるさ」
ジークの心配そうな顔にギンを思い出し、少し落ち着きを取り戻して答える。もう弱音ばかり吐いてもいられないと、俺は気を取り直した。
以前までならいつまでも逃げ道を探していただろうが、目の前でソーレイが死んでから、俺はある種の迷いがなくなっていた。
身勝手な理由で人間の敵になったことへの、不安や罪悪感。それらはソーレイの死によって、以前よりも希薄になっている。人生さえもゲーム感覚だった俺だが、彼女の死は無関係を装えないほど身に迫る体験だったのだ。
良いことなのか、悪いことなのかは分からない。だがもう後戻りは出来ないという今更過ぎる事実が、ソーレイの死に様と共に脳に刻まれていた。
「ふふ……。少し安心しました」
「安心? 安心って……何にだ?」
ジークがやけに嬉しそうに言うので、俺は困惑しながら尋ねた。
「最近、カミル様の様子がおかしかったので……。今日は久しぶりに、いつもの顔に戻られた気がします」
「そ、そうか? そんなに違って見えたか……」
これまでジークに俺を疑っている素振りはなかったので、思わず焦る。何かボロでも出ていたのだろうか。
「騎士団が思う通りにいかないのは、仕方のないこと。しかしそれでも諦めないところが、カミル様の良いところです。勇者会議でも、今のお気持ちをお忘れなきように……」
ジークが一体何のことを言っているかは分からない。だが、覚悟を決めた俺がカミルと同じ顔をしているというのなら……彼も本当は、単なるクズというわけではなかったのかもしれない。
せっかく人を敵に回すことへの罪悪感を捨てたばかりなのに、余計なことを聞いてしまった。少しだけ気勢を削がれてから、俺は会場へと向かった。
「じゃ今回の司会は私が務めるぞ他の奴らに任せてちゃいつまでも終わらない上に虐殺に任せるのは言語道断だからなってぇことで開始だまずは私から」
今回の勇者会議は、神速の勇者が中心となって進めるようだ。
前回はカミルが敗走した経緯を報告するという体の会議だったが、今回は完全にカミルを糾弾するための会議。カミルに自由な発言は許されておらず、他の勇者が意見を求めるまでは喋れないらしい。
立場の危機を改めて感じたが……その前に、もう一つの衝撃があった。誰にも聞かれないよう、俺は小声で呟く。
「あいつ……勇者だったのか……」
前回の会議とは、進行方法だけでなく出席者も違った。殆どは同じメンツだが、死んだソーレイがこの場にいないのはもちろん、代わりに一人の男がいる。
俺よりもかなり薄い鎧に身を包んだ、柔和な顔の青年。彼は、ギン達の服を買った店の店主だった。
勇者のような異常さを感じないためかなり意外だったが、もちろんカミルは知っていたはずなので驚きを表に出さないよう注意する。
「おいお前無視してんじゃねぇよ自分が一体どれだけまずいことしたのかまだ自覚してねぇのか? 勇者が死んだんだ! 魔王が死んでから初めてなんだぞ分かってんのか!?」
「分かっているさ。もちろん反省もしているし……相応の罰も覚悟している」
気が逸れた俺に神速の勇者が怒りだしたので、俺は意識を会議に戻した。もう何も迷いはしない。少しでもギン達のためになるよう頑張るだけだ。
「これからは単独行動をしないと誓おう。騎士団の動向は余さず、勇者会議で事前に報告する。もちろん騎士の名に誓って、これまで得た情報も全て開示するよ」
「はっ、成る程な逆に言えばお前を勇者の座から落とせば情報は開示しねぇってわけか。おおかた暗躍の奴も情報を餌に味方につけたってとこだなお前らしいやり方だ」
俺の言葉に、神速の勇者が鋭すぎる推測を重ねた。カミルらしいやり方と言われたのは気にくわないが、彼女の推測は全てその通りだ。彼女に続いて、カウボーイハットの青年が続く。
「大きすぎる失敗を二度も繰り返しておいて……それだけの譲歩で許されると思ってるのか? 正直、俺はもうこの場にお前がいることが不思議でならない」
前回は俺に対して友好的だった彼だが、俺が協調路線を取ろうとするや否や見捨てやがった。興味なさそうに俺を見つめる目からは、如何にして俺を勇者の座から引きずり落そうかという思索が覗いていた。
やはり、人間はどうしようもない奴ばかりだ。俺は先ほどのジークの笑顔を思い出さないようにしながら、人間への失望を活力に転換する。
「許されるとは思っていないが、君達にとって僕が不可欠だとも……思っているよ。情報の面でも戦力の面でも、僕がいなければ何も始まらない」
「戦力だと!? おめぇ、自分でその戦力を減らしておいてよく言えたな!!!」
「失った戦力のぶん情報を得たって言ってんだ。今僕を切り捨てたら、そりゃ暗躍の犠牲を無駄にするのと同じだぞ」
「カミル様、それは……!」
ソーレイを盾にするような俺の言葉を聞いて、後ろからジークの慌てる声が飛んでくる。
勿論俺がもっとも口に出してはいけない言葉だが、こうでもしなければカミルの利用価値は保てない。地位が剥奪されてただの罪人に成り下がるよりは、勇者全てを敵に回して彼らの動きを乱した方が有意義だ。
過去最多の青筋を浮かべて俺を睨む神速の勇者に、こちらも負けじと笑みを返す。これはもう、一種の宣戦布告だ。
「クズだクズだとは思ってたがここまでとは思わなかったぞなあ虐殺、暗躍が死んでお前だけが生きているのはやっぱおかしくないか? いや、お前、まさか……」
神速の勇者が異様な速さで思考を進め、何に思い至ったのか目を見開く。彼女は一瞬怯えるような顔をしてから、すぐに元の殺意の籠った目で俺を睨んだ。
「おい轟雷、今すぐそいつを殺せ。今すぐにだ!」
いつも以上に激しい口調で、神速の勇者は物騒な指示を出した。それに反応したのは、俺の近くに座っていた例の店主だ。
「殺すって……虐殺をかい? そんないきなり言われても、騎士団長殺していいわけないだろ? 怒るのは分かるけど、もう少し落ち着いて……」
「クソッ、どいつもこいつも鈍間ばっかか! クソッ! クソッ! クソッ!」
轟雷の勇者がまっとうな意見を返すと、神速の勇者は机を殴りながら怒り出した。一回しか殴っていなかったように見えたが、彼女が叩いた円卓には無数の大穴があけられている。
今の反応、まさかカミルが魔獣側に寝返ったと気づいたのだろうか。予想以上の勘の鋭さに恐怖を覚えながら、俺は神速の勇者を注視した。
「はぁ……はぁ……。いや、そうだな。確かに私もどうかしていた。虐殺の処分は、一時的な戦士ギルドへの異動としよう。その間、騎士団の全権は副団長に移譲する」
「えっ!」
「なっ……!」
口では反省していると良いながら、彼女は未だに俺を睨んだままだ。そんな彼女の言葉に轟雷の勇者とジークが驚くが、俺は彼女が何かに気づいた時からこの結果は予想していた。
他ギルドへの異動ということは、そこの勇者に逆らえなくなるという事だ。俺を他の勇者の下につけることで、戦力として確保しつつも監視や場合によっては魔獣をおびき出す役目にも使える。
この結論を下した時点で、神速の勇者はカミルが寝返ったことを半ば確信しているのだろう。
やはり神速の勇者が、一番危険だ。俺は冷や汗を流しながら、後半の会議では虚偽報告を重ねまくるのだった……。




