束の間の休息
同時連載している作品がクライマックスなので、こちらが普段以上に遅れてしまっています!
冬休みに入れば元の三日に一回ペースに戻せると思うので、どうかご了承下さい…!次回もちょっといつになるか分かりません…。
ソーレイが死んだ後はナイフを警戒する必要もなくなり、信徒達はいとも簡単に鎮圧された。
残った信徒全てを能力で支配することも考えたが、どうやら支配能力にも限界があるらしく、今のところは三人までしか支配することが出来なかった。
しかしソーレイが死んだ今、敗走した信徒三人の発言力など無いに等しいだろう。
「大丈夫?」
「……あぁ。ソーレイが死んだせいで、カミルの立場がより危うくなったなって考えてただけだよ」
俺が元の体に戻ると、ギンが気遣ってくれた。
俺は強がって見せたが、眉尻を下げている彼女を見るに、それが本心でないと見抜かれているらしい。
下手をすれば人間よりも表情豊かだ。彼女の分かりやすい顔を見て、俺は少しだけ元気を取り戻した。
「人間殺すの……やっぱりイヤ?」
「いや、そんなことはないよ。でも、それを嫌とも思えない自分に嫌気がさしちゃってな」
隠しても仕方ないと考え、ギンの質問に答える。ソーレイの死に方を見たせいで、改めて自分の身勝手さを意識してしまったのだ。
生き死にと無縁だった一般高校生にとって、一番身近だった死はやはりゲームの中の出来事だった。ゲームの中で何百人も殺した俺に、今更人の死を悼めと言われても困る。
こんな考え方だから、俺は人と向き合ってこれなかったのだろう。自嘲の笑みを浮かべていると、それに呼応するようにギンも微笑んだ。
「それなら、良かった」
「え? あぁ、俺が勇者を倒すのに躊躇してたら困るもんな」
まさか良かったと言われるとは思っていなかったので、俺は意図を理解するまでに時間がかかった。しかし推測を口にすると、ギンは意外にも首を横に振った。
「殺すの怖がってたら、疲れちゃうから」
ギンが俺と同じ考え方をしているのが意外で、俺は目を見開く。しかし少し考えると、同じ考え方などではないことに気がついた。
人の死と無縁だった俺とは違い、彼女は死が身近すぎたのだ……。
二つのギルドが魔獣に敗れたとなれば、流石に勇者達も全力で魔獣を潰しに来るだろう。そうなる前に、俺達は街に侵入して拠点を作る用意をしなければならない。
「よし、じゃあちょっと服を着てみてくれ」
少し経って落ち着くと、俺はギン達を呼び集めた。人間の街に侵入した後、なるべく人に紛れるために服を着てもらうつもりだ。
「まずはネインからだな。さっきの戦いでは、本当によくやってくれた」
「うん……頑張った」
すました顔をしているものの、喜びで口許が歪んでいるのを隠しきれてない。
自分でも殻を破れた実感があるのだろう。読み方を教えた魔法が訳に立って、俺でさえ達成感があった。
「じゃあ着方分からないだろうから、服を着せていくぞ。まずはこのシュミーズを着て、上からガウン……なんだけど……」
俺の視線が、自然とネインの角に固定される。こいつに服着せるの、難易度高すぎるだろ……。
「角が服に刺さったら破れるから、頭動かすなよ!」
中世の服はおろか女性の服にすら詳しくないため、俺は無理矢理彼女に服を着せていった。
魔獣と同じように簡単に支配できるなら一時的に支配して服を着るだけで済むのだが、魔人だと何故かそうもいかないのが辛いところだ。
服の感触が慣れないのか、ネインがムズムズと体を揺り動かす。やはり服が破けそうなので、俺は彼女の体を服越しに手で押さえつけて少しずつ服を下に下ろしていった。
「あ、そこ……触っちゃダメ」
「うわ! す、すまん……。悪気はなかった……」
彼女は体表が白い毛で覆われているため胸の大きさが分かりづらく、服を着せていると意識しないまま触れてしまう。割と……ある!
体毛がなければ裸なのを意識してしまってから作業効率は大きく落ちたが……それでも、なんとか着せ終えることが出来た。
「んで、これ耳と角隠すようの帽子な」
「んー……」
仕上げとばかりにネインの頭にかぶせたのは、羽飾りのたくさんついた大型の帽子だった。
こうでもしないと兎のような長い耳が隠せないので、仕方ないのである。
クソ重い帽子をかぶったネインが、不満そうに半眼で見つめてくる。これも魔獣繁栄のためだ……許せ……。
「私は炎でちゃんと隠れてるから服なんかいらねぇよ?」
「いやそういう問題じゃねぇよ。街中に恥部を燃やした女の子がいてたまるか」
見当違いのことを言うテラにも、体の火を消させてから無理矢理に服を着せていく。いつも強気な彼女が無抵抗でされるがままになっているのは、新鮮で可愛かった。
「サクは……このローブを着てくれ」
「なんか他の皆と雰囲気違くないでござるか!? なんかすごくダボッとしてるでござるが……」
「だってお前、手が鎌だから普通の服じゃごまかせないじゃん……」
「そんなっ!」
ということでサクには布一貫を着せて、見ちゃいけませんってレベルの貧乏感を演出。
カマキリだからか体が柔らかく、布を着せているだけでちょっと興奮しました。ごめんなさい。
「やった! 新しい服!」
最後はパーカーがビリビリに破けているギンに、同じ色合いの服を着せる。
自分の意思でパーカーを脱がせるのはなかなか恥ずかしかったが、服を着ることに慣れているためか着せるのはあっさりと成功した。
「ありがとう! この服も気持ちいいっ!」
しかしギンの場合は興奮すると犬みたいに尻尾が揺れてしまうので、それだけは問題だった。
今にも服を突き破りそうな尻尾を服越しに握りこみ、どうしたものかと思案する。
「ん……なんか、気持ちいい……」
「尻尾握っだけで発情しないでくれ。んー……、やっぱこうするしかないか」
思案の結果、俺はギンの尻尾を前側に押し出した。感情が高ぶる度に動くのでは絶対バレるので、股で押さえ込んでもらうことにしたのである。
「んんっ……」
「すまん、我慢してこれにも慣れてくれ……」
ギンの尻尾をギンの股間に押し付けていると流石にいけないことをしている気分になるが、やらなければいけないことなので仕方がない。
最後に布で頭を覆って耳を隠し、ようやく四人に服を着せ終わった。なんだかんだ皆服は気に入ってくれたようなので、服を選んだ俺も少しだけ嬉しくなった。
しかしこの喜びも、現実逃避の一環に過ぎないと自覚している。このまま人間の街に帰れば……前以上に状況の悪い勇者会議が待っているのだ……。




