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神官の説得

「どういう風の吹き回しですか?」


 共同戦線を提案した俺は、神官代表に訝しげな声でそう言われた。協力を申し出るだけでここまで疑われるとは、流石カミル、人望がない。


 買い物が終わって俺がやってきたのは、神官代表が住んでいるという教会だ。そこには多くの信徒がいたため人払いを頼むと、防音性の高い懺悔室に案内された。今も俺達は懺悔室の中にいるので、仕切り板で互いの顔は見えない。なんでやねん。


 俺は交渉の場所に多少の不満を抱きながらも、神官代表の質問に答えた。


「攻撃を部下に肩代わりさせられる僕が負けたのは、偏にケダモノの数が多すぎたからだ。ただの肉の壁では耐えられないが、逆にもう少し攻撃を耐えられさえすれば……こちらに分がある」

「それで、私の助けが欲しいと。……しかし聞くところによると、あなたの部下は数人逃げ帰っているそうではないですか。たとえ部下の体力を私が回復させようと、また逃げてしまうのでは仕方ないと思いますが?」


 神官代表の言葉に、俺はハッと息をのむ。彼女が言っているのは、おそらくカミル戦で俺が逃がした部下達のことだ。騎士ギルドで見かけないと思っていたが、教会に駆けこんでいたということか。


 となるとカミルの能力も告げ口されている可能性がある。種が割れればカミルは決して強くない。交渉が難航しそうな予感に、俺は眉を顰めた。


「今度は騎士団の上位層を連れていくから、問題はないよ。騎士団の調査でケダモノどもの移動先も把握している。その情報の価値は、君も把握しているはずだよね?」

「やはり魔物は移動していましたか……。その情報は確かに得難いものですが、私にはあなたが必死に協力を要請することの方が気がかりでなりません。裏があるとしか思えないのですが?」


 少し嘘を混ぜながらも協力のメリットを提示すると、芳しくない反応が返ってくる。仕切り板によって表情は見えないが、彼女が警戒していることだけは伝わってきた。


 だが仕切り板は表情を隠してくれるため、俺も適当なことを言いやすい。元々考えてあった動機を、なるべく熱く語る。


「僕は手柄を独り占めしたいんだ! しかし部下を数多く失い、今すぐにはそれが敵わない……。そうこうしている内に他の勇者どもに手柄を奪われやしないかと思うと、僕は夜も眠れないんだよ!!!」


 懺悔室にふさわしい、クソみたいな台詞を吐く。それでもまったく違和感を感じさせない騎士代表さんチーッス。


「もし手柄を分けるとしたら、同じ公的機関である教会が一番マシだ。他のギルドと協力でもしたら、分け前がどうなるか分かったもんじゃない!」

「あまり堂々と公的機関とか言わないで欲しいのですけど……。べ、別に政府とは関係ないんですからね! 勘違いしないでくださいよねっ!」


 ツンデレのようなノリで、怪しい台詞が聞こえてくる。しかしその声からは、先ほどまでの迫力が失われていた。どうやら動機があまりにがカミルらしかったからか、納得して警戒心を解いてくれたようだ。


 もう一押しだと考えて、俺は語気を強めた。


「分け前や手柄は半分でいい。そして何より、戦う時は僕の部下を回復さえしてくれれば文句は言わないよ。後方で待機していてくれて構わない」

「そういうわけにもいきません。後方で黙って見ているなど、私の流儀に反します」


 最大限の譲歩を見せると、神官代表から否定の言葉が入ってきた。流石神官、正義感に熱い人なんだなぁと感心していると……。


「ですので、報酬はこちら六割、あなた方四割でお願いしたく思います」


 完全に報酬目当てだった。勇者にはロクな奴しかいねぇのか。


 純真なギン達と比べてあまりにも腹黒い勇者に呆れながらも了承すると、ようやく協力をとりつけることが出来た。


「神官ギルドとその代表、暗躍の勇者ソーレイ。魔物の討伐に、力を貸しましょう」


 その台詞が懺悔にならないと良いね、ソーレイ。


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