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買い物

 翌日。俺は意識をカミルの体に移し、騎士ギルドの近くにある万屋まで買い物に来ていた。


 一軒家三つ分くらいの広さがあり、高さも他の住宅より二倍ほどある石造りの店。万屋というだけあって武器から日用品まで何でも揃っていて、店の異様な規模に軽く驚いた。

 しかも不思議なのは、規模の割に店員は一人しかおらず、机に座って何かをいじる青年が一人いるだけだった。


「おっ? 護衛もつけずに来るとは珍しいね。今日は何をお探しだい?」

「いや、その……女物の服が欲しくてな」


 店に入ると奥の机から店主がやって来て、馴れ馴れしく話しかけてきた。用件を言うのは大分憚られたが、嘘を言っても仕方がないので正直に白状する。


 今日買い物に来たのは、ギン達の服を買って彼女達に届けるためだ。

 今の姿が目に毒だというのもあるが、街に潜入する時に尻尾等を隠せる服を着てもらわないと困るのである。


「女物の……服? まさか君に女装の趣味があるとは思わなかったな……」

「いや違ぇよ。もっと色々な可能性あるだろ普通に」

「彼女へのプレゼントかい? そうか。ジーク君に女装の趣味があるんだね?」

「さらっとジークを彼女にカウントしてるんじゃないよ」


 店主の笑顔からして冗談なのだろうが、カミルの記憶がない俺には冗談なのかどうか判断つかないからそういうのマジでやめてほしい。ちょっとジークのこと意識しちゃうじゃん!!!


「女物の服なら他の店を見た方がいいと思うけど……。まぁ、一応うちにも置いてるよ。こっちが服置き場だ」

「おぉ、ありがとう。んじゃ、上着はこれとこれとこれと……これかな?」

「何着買う気なんだい一体!?」


 服のコーナーに案内してもらったので、身長を基準にして四着選ぶ。

 もちろん正確な身長は分かりようがないのだが、ワンピースのようにシンプルな服が多いので多少の誤差はなんとかなりそうだ。


 そんな風に服を選んでいると、店主が横から驚きの声を上げた。


「なんでそんなに……。プレゼントに服の詰め合わせでも贈る気なのかい? いや、それぞれサイズが違うのは、まさかの四股……」

「うるさいよ。次は下着のところに案内しろ」

「パシリにでもなったのかい君!?」


 店主は相変わらず、馴れ馴れしく余計なことまで聞いてくる。

 眼鏡をかけた細身の男なのにここまで気安く喋ってくるのは、余程馴染みのある店なのか、それともこいつの性格なのか。判断しかねながらも、彼を追って下着のコーナーまでいく。


 正直ギン達のパンツを買うところを想像して若干興奮していたのだが、剣と魔法の世界にそんなものがあるはずもなく、味気ない色のアンダードレスだけ買う破目になった。逆に恥ずかしい……。


「じゃあ、これで頼む」

「はい毎度ありー」


 何冊か魔導書も選んでから、会計を済ませる。これが終わったらさっさと神官代表のところに行くつもりだったが、その前に店主が俺を呼び止めた。


「カミル君」

「うん? なんだい?」


 振り返ると、彼は少しだけ表情を堅くして、言った。


「君、少し変わったね?」

「……!」


 やはりカミルに馴染みのある相手だったのか。一瞬この店主を秘密裏に殺す算段を立ててしまうが……俺にはどうしても、彼が有害な人物には思えなかった。


 俺は彼を警戒しつつも、予定通り店を後にして、神官代表のところへと向かった……。


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