勇者会議
複数同時連載による睡眠不足で体調を崩し、投稿遅れました。申し訳ないです…。
なるべく二日に一回は守っていきたいなぁ。ストックが…足りない!!!
威圧感は、感じなかった。
自分より固い壁に威圧感を感じないように、俺は彼らを見ても、何も感じない。
ただただ、今の俺にはどうしようもないと分かるだけ。手の出しようもない確固たる存在として、彼らはただ、そこにいた。
「今日は僕のために集まってくれてありがとう……ってなんかおかしいな。別に僕のために集まってくれたわけじゃないか……」
焦りすぎて、変な言葉まで口に出てしまう。彼らはリラックスしているにも関わらず、この重圧。焦るなという方が無理だった。
俺の前には円卓が広がっており、四人の勇者が椅子に腰かけている。俺がこの街にやって来た翌日、大急ぎで第二十回勇者会議が開かれたのだ。
「御託はいいから早く話を始めようやウチは忙しい上にどうせ今回の議題はお前が負けてごめんなさいっつうクソつまらん内容だろ? そんなことしてる暇があったらさっさと全員で攻めた方が早いだろなめてんのか」
まず声を上げたのは、一人の女の子だった。
赤い道着を着て、少し茶色がかった長髪を後ろで結んだ少女。
豪快そうな格好に違わず、口調はとても荒々しかった。息をつくことすらなく、マシンガンのように言葉をまくし立てる。
「手柄がどうとかギルドの威信がどうとかそんなどうでもいいかこと言ってるからこうなるんだ魔獣の残党をさっさと蹴散らしたらそんな手柄何の意味も無くなるってなんで分かんねぇ」
「だからこそだろう? 神速の」
速すぎる彼女の罵声に答える前に、勇者の内の一人が彼女に意見した。
黒く大きなカウボーイハットを被った、切れ長の目をした青年。彼は何が面白いのか軽い笑みを浮かべながら、言葉を続けた。
「何の準備もなしに魔獣を滅ぼせば、私達の存在価値がなくなる。だから今のうちにギルドの基盤を固めようとしてるんじゃないか。早まるな、と前回も言ったはずだが?」
「だからそんなまどろっこしいことしてる場合じゃなくなったって話なんだろ今回の集まりは? いくら調子に乗ってたとはいえ虐殺の部下が全滅したんだじゃあさっさと倒した方がいいだろ結論は出てんだから過程は飛ばせ会議を終えて早く魔獣を殺しに」
「結論を急ぐな、神速。まずは、彼の話を、聞くのが先だ」
神速というのは、道着の女の子の二つ名なのだろう。
青年の言葉を聞いた神速の勇者は不満を露わにして叫んだが、今度はもう一人の男に発言を遮られた。これまで以上に凄い剣幕で、彼女は声の主を睨む。
顔を黒い糸で縫い尽くした、中年の男。
声を発した彼こそが、俺が最初に出会った勇者……隔絶の勇者だ。
彼の目は神速の勇者ではなく、まっすぐと俺の瞳を見据えていた。それだけで最初の遭遇を思い出し、俺の首筋に冷や汗が流れる。
「何故、彼が負けたのか。それが分からぬことには、攻めるのも、危険が伴う」
「あぁクソお前のノロマっぷりには本当に嫌気がさすもっと速く喋れねぇのかクソが、消えちまえっ!」
怒りを一切隠すことなく隔絶の勇者に怒鳴りつけ、神速の勇者はどかっと椅子に座った。ストレスを紛らすためか、異様に速い貧乏揺すりを始める。
こんな殺伐とした状況で喋るのはあまりに緊張するが、発言を求められているのだから仕方が無い。俺は乾いた口のまま、勇者達への報告を始めた。
「僕が負けたのは、偏に一人の人間のせいだよ。隔絶が見たという、魔獣に味方する人間……。そいつが魔獣どもに入れ知恵していた」
カミルの口調を思い出しながら、疑われないように本当のことを言う。もし俺が隔絶の勇者に見つかっていなければ伏せた方が良かった情報だが、もう今更だろう。
「やはり、存在したか。魔獣の味方をする、人間」
俺の報告を聞き、隔絶の勇者が唸る。まぁ俺は今、お前の目の前にいるんだけどね……。
「入れ知恵と言うと、具体的にはどのような?」
「普段より統率がとれていた程度で、大したことはない。ただ僕の油断のせいで、数の差を埋められずに部下達を失ってしまった……」
「あら、あなたにしては殊勝な言い草ですね」
俺に質問を寄越したのは、これまで発言していなかったもう一人の女性だった。
純白のローブを着た、常に穏やかな笑みを浮かべている女性。俺に話している間も常に微笑みを崩さなかったが、その目からは俺を探ろうとするような気配が見えた。
「部下がもう少ししっかりしていれば、僕は無傷で帰れたんだからね。もっと部下の教育に力を入れるべきだったと反省もするさ」
あまりまともなことを言っていると偽物だとバレそうなので、カミルが言いそうなクソ発言をしてみる。すると皆が「あー」みたいな納得の表情を浮かべたので、助かったとは言え凄く複雑な気分だ。仲間にもクソ人間扱いされてんのかよ、カミル……。
「要するに今のところは脅威になり得ないってことだろ? ならやっぱり早く全員で攻めようぜ騎士団との戦闘で相手は多少なりとも消耗しているはずだ知恵をつけ始めてるなら叩くのは今しかねぇ」
「しかし、神速」
「お前の悠長すぎる慎重案は聞かねぇぞ隔絶、相手が消耗したという事はダンジョンに死骸がたくさんあるんだそこに人間がいるなら病気を恐れてどこかに逃げちまう」
さっきから思っていたことだが、神速の勇者は荒い口調の割に賢く、態度の割に冷静な判断をする。なかなか厄介そうな相手だ。
どうやら勇者同士の仲はあまり良くないようだが、彼らがもし、全員カミルと同等の力を持つのであれば……。今手を組まれては、勝ち目がなくなる。
「とにかく、僕に言えるのはこれだけだ。油断さえしなければ勝てない相手じゃない。相手のことを知ってる優位を捨ててまで、君達と仲良しごっこをするつもりはないね」
「名誉を回復しないことには、今度こそお前の騎士団は終わりだからなぁ」
「そういうことだ」
この会議をいち早く終わらせるため、俺は誰にも協力しないという意思を明らかにする。するとカウボーイハットの青年が、俺の心情を勝手に解釈してくれた。
男の満更でもない表情を見るに、彼も協力態勢をとることには反対のようだ。彼とはある程度の関係を保ち、敵対しないようにしたい。
「てめぇ、まだそんな下らねぇことを……」
「それより、他の勇者達はどうしたんだ? 勇者会議だというのに、半分しか集まってないじゃないか」
協力についての話を打ち切るため、強引な話題転換を計る。神速の勇者に睨まれたが、実際に気になっていることではあった。
「轟雷の野郎は知らねぇよでもそれ以外の奴が来るわけねぇじゃねぇかなんだ今更?」
「いや、うん、そうだったな。轟雷の姿が見えないから、少し気になっただけだ」
実を言えば勇者の数が十人より減っていることを期待していたのだが、単に会議に出席していないだけらしい。こいつらより癖のある奴がいるってことかよと、俺は戦慄する。
殆ど知らない人のフリをし続けるのは流石に疲れたので、俺はとうとう勇者会議を締めた。
「これ以上話すことはないな? では騎士代表の名において、勇者会議を閉会する」
「無意味な時間だったな」
神速の勇者が、最後にポツリと呟いた。




