work007 揺れる船
アイサ国からデュモンク王国へ海を渡る。
夜が明け、水平線から差し込む朝日が船の甲板を照らした。
昨夜の時化が嘘のように海面は輝いているが、船室から這い出してきたニアの顔は、朝日よりも青白かった。
「...うぅ。ほとんど眠れなかった...。」
ニアは手摺りにしがみつき、今にも崩れ落ちそうな膝を必死に支えていた。一晩中、胃袋を裏返されるような激しい嘔吐感に襲われ、一睡もできていない。重度の船酔いに、意識の輪郭すらぼやけていた。
そこへ、少し足取りは重いものの、自力で歩いてきたルタカザカとエイシアが合流する。
「...おはようございます、ニア先生!? 大丈夫ですか!? 顔色が...」
ルタカザカとエイシアは顔をしかめ、自身のこめかみを押さえながら言った。彼女たちも軽度ではあるものの船酔いで気分が優れないようだ。
そんな満身創痍の3人の前を、軽やかに浮遊する2つの影が横切った。
「おはようございます。」
床から数センチ浮いた状態で、テュノンが涼しい顔で近づいてきた。
「皆さん、おはようございます。」
シィナもその隣で、ふわふわと優雅に浮きながら微笑んでいる。
「おはようございます、テュノン様、シィナ様。お元気そうでなによりです...」
「あれ、ニア先生、船酔いー?」
ファブが声をかける。
「は、はい...ファブさんは船酔いは?」
「ないない!私、そういうのなったことないんだー!」
「(ニア先生、ファブ様は風邪なども引かれたことがないとの噂でして...)」
エイシアが小声で囁く。
(マジでファブさん超人じゃん...)
「ニア先生、おやすみされている間も浮いていれば、船酔いしないで済みますよ?」
とテュノンが平然と言う。
「え?いや、寝ながら浮く?そんことできないですよ。え?普通、できるものなんですか?」
「「いや、普通はできないです。」」
ニアの問いに、ルタカザカとエイシアがブンブンと首を振った。
「私もできなーい!」
ファブはそう言って笑うと、手にしたアイサ酒の入った壺をグビグビと煽った。




