work004 師弟絶許
テュノンらが雷魔法を体系化する過程で事件は起こった。
「ニア先生!素晴らしいです!この"デンキ"は魔法の歴史を塗り替えました!」
トリピスは高揚していた。
うんうん、とテュノンとシィナが頷く。
「そして、この"デンキ"を活用することで、これから作られる魔導具は飛躍的な発展をとげること間違いありません!」
うんうん、とテュノンとシィナが頷く。
「ニア先生!私を弟子にしていただけないでしょうか!」
うん?テュノンとシィナが首をかしげる。
宮廷魔法師団には師弟関係のある者たちが存在する。
師団の序列、年齢、性別等に関係なく、師匠となる団員が同じ団員を弟子としてとるというものである。
これは師団が制度として設けているものではなく、古くから師団の慣習として根付いているものである。師弟関係は団員間の合意により成立する。
例えば、【テ組】ファブ・キノンは、多くの団員から弟子にしてほしいと懇願されているが、『なんか、そういうの面倒くさーい』という理由から弟子をとったことがない。
「是非とも私のお師匠様として、今後とも魔法について、この世の理について、ご指南のほどをお願いしたく…」
「絶対ダメ」
テュノンが怪訝そうな顔をして言い放った。
「そうです。そもそもニア先生は団員ではなく、我がデュモンク王国の最高顧問なのですから。」
シィナも追撃する。
「し、しかし、当事者間の合意があれば…」
「絶対ダメ!」
テュノンがトリピスを睨みつける。
「トリピスさん……」
シィナはこれ以上は言わせるなと言わんばかりの表情である。
「あ、あの…ついこの間もテラブさんに同じことを言われまして…」
(そのときも、テュノン様とシィナ様がこんな感じで、同じ展開になったんだよなぁ…)
「師匠とか弟子とかそういうのはちょっと…。ただ、微力ながら今後も私の知識や技術的なことは皆様に共有できればと考えております。」
「…は、はい、そういうことでしたら、今後ともよろしくお願いいたします…。」
蛇に睨まれた蛙のようなトリピス。
この一件をきっかけに、ニアに師弟関係をもちかける団員は現れなくなった。




