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モンスーンの雨と硝煙 そして君  作者: 菅谷 ケント
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敵戦車見ゆ

打合せが始まった。オーキがカイトを通訳としてミヒャエルに質問をした。


「ミヒャエル君、この砲の装甲貫通能力はどれぐらいかね? 」

「距離1500mで100mm程度の装甲は撃ち抜くことが可能だ」

「なにっ!? 本当か? 」


オーキが驚いてそう叫んだ。カイトも自分のドク語が間違っていないかを確認して再度同じ質問をしたがミヒャエルが回答した数値は変わらなかった。オーキが感嘆の表情で唸った。


「そりゃ凄いな……」

「どう凄いのです? 」


カイトは砲の専門家ではないので8.8cm高射砲の貫通能力の凄さが分からない。オーキはカイトに丁寧に説明した。


「敵の戦車の装甲は一番分厚いところで50mmはあった筈です。我々の砲ではどうやっても貫けない敵戦車の装甲をこの砲なら1.5km離れたところから撃っても貫通出来るってことです」


ヤポン軍兵士がその命を散らして肉弾攻撃をしてもなかなか破壊出来なかった憎き敵戦車の装甲をいとも簡単に貫通出来ると言われてもカイトとオーキは信じられなかった。ミヒャエルの話が本当であればカイト達が潜む森林の前に広がる荒野は見晴らしが良い為敵戦車を視認した時点で射撃を開始すれば相当有利に戦いを進められるのだ。


「彼の話が本当であることを信じましょう」


オーキはそう言って笑った。だがすぐに真顔に戻るとこう言った。


「カイト少尉、高性能な砲とはいえ所詮一門しかありません。今は雨季ですが天気が晴れて敵機がこの森林に爆弾をバラ撒けばこの砲はいつ破壊されてもおかしくないのです」

「……そうですね」

「ミヒャエル君、この砲の弾薬はどれぐらいある?」


オーキがミヒャエルに向き直ってそう聞くとカイトがそれに合わせて通訳した。ミヒャエルは「徹甲弾と榴弾がそれぞれ百発ずつ程度だ」と答えた。それを聞いてオーキはカイトにこう言った。


「もし雨が続いてくれれば何回かの戦闘には耐えられるかもしれません。ですが敵がその物量に物を言わせて大軍で押し寄せてくれば我々はいずれ押し切られるでしょう。兵士の数も五十人もいないし皆痩せ細った負傷者か病人ばかりだ」

「どうすれば良いのです? 」

「速やかな後退も出来るように準備しておく必要があります」

「……」


カイトが何と答えて良いか分からず黙っているとミヒャエルがカイトにオーキの話している内容を教えてほしいと割って入ってきた。カイトは丁寧に通訳をした。そもそもカイトにはオーキの言葉に対する回答など出せる筈がなかったのだ。するとオーキの言葉を聞いたミヒャエルがこう言った。


「私もミスターオーキの言葉に賛成だ。優秀な8.8cm高射砲とはいえ一門では効果を挙げ続けることは出来ない」

「……どうすれば良い? 」

「私に考えがある。トラックと台車を貸してほしい」

「……分かった」


カイトはミヒャエルの言葉に従いサ・ガンにトラックと台車の使用を申請した。敵が攻めてくる前にミヒャエルの計画を進めなければならないのだ。するとサ・ガンの尽力のお陰かトラックと台車は準備されミヒャエルの計画も司令部で承認された。カイト達の準備はゆっくりとではあったが着々と進みつつあった。そうして一週間経った雨の日のある朝、遂に敵部隊がやってきた。歩哨が叫ぶ。


「前方に車輌! 敵中型戦車接近! 」

「遂に来たか……」


カイトがそう呟きながら8.8cm高射砲の脇に立ち双眼鏡を覗き込む。その日は小雨で視界は悪いが地平線から荒地を土煙を立てて近づいてくる敵戦車がカイトの目でもはっきりと確認出来た。

いよいよ8.8cm高射砲を使った戦いが始まるのだ。

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