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004_ダンジョンへ

 イジワルな大人二人に対して私は白い目を向ける事しか出来なかった。

 

 ガーゴファミリーの面々は次々と階段を降り始めてたので、私も慌てて彼らについていった。

 階段を降りると眩い光に包まれた。光はどんどん強くなり、最終的に目を開けていられなくなる。今、私は階段を下っているのだろうか。次第に平衡感覚もなくなる。立っていられそうにない。最後に体のあちこちが引っ張られるような感覚がした。


「もう目を開いて大丈夫だよ」


 アキニレの声がした。気が付くと私達は巨大な洞窟の中にいた。

 

「さあ、ここからがスタートです」


 そう副団長が告げた。

 左右の壁は鉱山のように整地されており、数メートル越しに松明が設置されている。だからそれなりに周囲を見渡す事が出来た。あの松明の火は消えないのだろうか? まあどうでもいいか。


「ッギィイイイイア!!!」


 スライムやゴブリン、低級の魔物が次々と襲ってくる。

 それらをサクサクと片付けてしまうガーゴファミリーの面々。若手の二人、フリュウポーチとバーナだけで十分に事足りている。このダンジョンは中堅冒険者レベルと聞いていた。ところが三十代のバーナどころか、入団したてのフリュウポーチですら十分すぎるほど戦力となっている。


 同じ新人でもこんなに差があるものだろうか。


 私は自分の自己肯定感がゴリゴリと擦り減っていくのを感じていた。一方で副団長は戦闘に参加せず、私たちと一緒に歩いてくれていた。ここまでの道中、私とアキニレに殆ど危険はない。

 

 フリュウポーチがスライムを切り捨てた。

 

 ダンジョン内で倒したモンスターは光の粒になって消滅し、またダンジョンのどこかで再生するらしい。


「リンは落ち着いているね」


 アキニレから声をかけられた。


「そうですか? 緊張感はもってるつもりです…」


「いや、初めてのダンジョンならもっと取り乱すのが普通かなって」


 なるほど、まあ言われてみればそうか。


「私のお婆ちゃんが冒険者だったので、割と…慣れっこですね」


「そういうものかい?」


「はい、というか魔物より人間関係の方が怖いです…。そっちの方が取り乱すし緊張します」


 私たちのやり取りを聞いていた副団長がにっこり笑みを浮かべた。


「リン君は冒険者に向いていますね」


「いやいやそれは無理です! お婆ちゃんを見てると私には無理だぁって思いますよ」


「分かるな、身近にプロがいるとそういうのあるよね」とアキニレ。


 私たちはここがダンジョンだと思えないくらい和やかに談笑を続けていた。人見知りの私だがアキニレ、副団長とは割と話しやすかった。穏やかな雰囲気だし何より話を振ってくれる。それが本当に有難い。私はただ聞かれた事に答えているだけである。しかもその返答もややネガティブだし…。


「キィィイイイイアッ!!」


 そう思った矢先、耳をつんざくような甲高い声がした。ゴブリンのものとは違う。もっと鋭い高音である。副団長が右手で私たちを制した。


 リザードマンだ、それも四体。


 身長は私たちとそう変わらない。ただし爬虫類特有の光沢のある皮膚が、松明の灯で橙色に照らされていた。トカゲのように細長い頭部も、尻から生えた太いしっぽも人間とは明らかに異なる。

 奴らはそれぞれ金属製の防具を装備している。が、個体ごとにそのデザインは異なっていた。もしや他の冒険者から奪ったものだろうか。右手には金属製の短剣を握りしめており、武器を握る手には鳥類のような鋭い爪がついている。

 

 それを見て私はゴクリと唾を呑んだ。


 今までリザードマンを見たことはなかった。というかゴブリン以外で人型の魔物を見るのが初めてだった。流石に迫力がある…。心臓の鼓動が大きくなり、魔導書を握る手にも力が入った。


「キィィイアッ!!」


 一番後ろにいたリザードマンが叫んだ。何かの合図だろうか。

 それに合わせて他のリザードマン達が一斉に切りかかって来る。魔物が統率の取れた動きをするのも始めて見た。


 ――まるで…人間みたいだ。


 いつも魔物に対する緊張感は持っている。しかし魔物を正面から「怖い」と思ったのは随分久しぶりだ。リザードマン達は明らかに〝言語〟を持っており、その事実に鳥肌が立っていた。



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