三人の役者
「あら、リンちゃんじゃない! チョベリグな再会じゃない!?」
「た、タングス!?」
アトラスOSでスポーツ部門に所属するタングスだ。優勝候補の一人と紹介されていたはずだが…何故こんなところに?
「ちょっと聞いてよ~。開会式で突然変な光に巻き込まれて倒れちゃったのよぉ。で、あーし低血圧気味で寝起きが弱々じゃない?」
――知らん。
「気が付いたら赤いドラゴンに運ばれてここに入ってたってわけ! マジでチョベリバ」
「この赤竜倒せますかっ?」
――今知りたい情報はこれだけ。
――これさえ分かればチョベリグ。
「もち!」
タングスの回答と同時に私は結界を解除した。ドラゴンが人間を出し入れできるような結界だから、外部からの開閉は容易。単純な作りでチョベリグ。結界の一部に出入り口のような穴が開いた。
「お願いします!」
結界の中には戦闘職の人も非戦闘職の人もいる。だが総じてドラゴンの放つ圧に硬直していた。ただ一人を除いて…アトラスOS・スポーツ部門のエースはゆっくりと結界から姿を現す。その顔に一切の焦りはなく、紫のアイシャドウが存在感を放っている。そして眼前の魔物と対峙した。
頼みの綱はこの男のみ。だがタングスはアトラスOSの〝スポーツ部門〟に所属しており「普段は魔物と戦わない」って言っていた。大丈夫だろうか…いや、既に賽は投げられている。赤竜の目の下には赤い模様が入っており、彼のアイシャドウと対照的な何かを感じた。両者の視線が交差…互いの実力を測り合っているようにも見える。
「なかなか強そうじゃない。チョベリグね」
「ガァアアアアアアアア」
すると赤竜ダンガー・ドランは、大空に咆哮を上げた。〝やまびこ〟みたいな大きく弧を描くような音。まるで遠くの誰かに呼びかけるような…。そしてドラゴンの瞳は、こちらを嘲笑うような三日月形になる。これはまさか――
「「ガァア」」
祭壇の更に奥から二体の赤竜が現れた。こんなに強いのが更に二体…否、それだけじゃない。背後からは緑竜や黄竜など、配下の下級ドラゴン達が続々と集まっている。それを見て、筋骨隆々の大男もポツリと呟いた。
「チョベリバ…」
――ですよね。
この赤竜、凄く正確が悪い。この状況に戦慄する私達を、嘲笑ってやがる。でも実際、コイツのせいで状況は最悪。これは流石に詰み…かもしれない。ところが、その刹那、私達の前にいたドラゴンの顔を〝何か〟が横殴りにした。それは巨大な水の柱である。
「あら、この一撃で顔が潰れないのですわね」
ゴシックドレスで戦場にくる女を、私は一人しか知らない。フリュウポーチのライバル――ネイルだ。そして背後にはアトラスOSを始めとする若手冒険者たち。
「アトラス様自身の口から真意をうかがうためにも…このダンジョンは〝なるはや〟で終わらせる必要がありますわ」
「「おおおおお!!!」」
「A班は黄竜の足止め、B班は――」
彼らはネイルの指示で次々とドラゴンの群れに立ち向かっていく。しかしそんな彼女に炎の息吹が迫る。先ほど現れた〝二体目〟の赤竜によるものだ。その攻撃範囲は緑竜のそれを遥かに凌駕する。
「ネイル!」
しかしその攻撃はネイルに命中することなく、左にそれていった。無論、突然大風が吹いた訳じゃない。彼女を守る形で一人の男性が立っていた。それが誰なのか、私は遠目でもはっきりと分かってしまう。あの柔らかな栗色パーマは――
「え、アキニレ!?」
驚きも束の間、今度は〝三体目〟の赤竜がアキニレに襲い掛かる。先ほどの二体より身体が大きく、その巨大な爪を振り上げた。
「ウォータン・ピラーですわ」
【ウォータン・ピラー_水柱を生成する魔法】
そんなドラゴンの身体を、今度はネイルの魔法が押し戻す。三体の赤竜と、背後から迫るドラゴン軍団たち。冒険者たちの戦いが始まろうとしていた。




