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切断魔法

「ラハハ、これは奇妙な縁だな」


「なにがです? 残念ながら頼まれたって、サインはしませんよ♪」


「いらんよ、トップスターに鬼人…どちらも吾輩の嫌いな人種なのだからな」


 アトラスが鋭い言葉をぶつけるが、ユニが怯む素振りはない。


「随分ハッキリ言うんですね? 人前に出る人はこういう時、〝嫌い〟じゃなくて〝苦手〟って言うのがマナーですよお?」


「…ふん」


「ああ、そういえば犯罪者で日陰者になったんでしたね♪ これは失敬♪」


 彼女はアトラスを煽りつつ、両足を肩幅程度に開く。そして利き足を一歩後ろに下げ、いつでも動き出せるゆとりを確保した。一方、後ろではレードルも刀を構えている。二人は慎重に強敵の出方をうかがっていた。


「来ないのであれば、吾輩からゆこう」


 最初に動いたのは、他でもないアトラス。彼が大きく剣を振ると、ユニはその隙をついてアトラスから大きく距離を取った。そのまま時計回りに動き、敵を挟み撃ちにする。この時点で圧倒的にアトラスが不利な状況。そして鬼人のレードルは、正面から伝説の冒険者と対峙する。ところがアトラスに焦る様子はない。


「ラハハ、君ら二人が何をしたいのか…手に取るようにわかるぞ」


「あはは、伝説の冒険者様の戦闘講座ですか?」


 彼は挑発するようなユニのセリフをスルーし、レードルの武器に視線を移した。片側のみに刃がついた近接武器――刀。鍛え上げられた名刀は、上品で艶やかな光沢を帯びている。まるで刀身が水分を含んでいるかのようだ。


「鬼人よ、珍しい武器を使っているな。一見、鋭く攻撃的な外見をしているが、カウンターに長けた繊細な代物だ」


「おっしゃる通り…ですね」


「君達の狙いは…鬼人が私の攻撃をいなし、一瞬の隙をついてユニが私の下半身を破壊する…大方、そんなところだろう」


「えー、なんで分かっちゃうんですか!? もしかして…年の功ってやつ!?」


 ユニは変わらず大げさに反応してみせるが、真にゆとりがあるのはアトラスの方だ。彼は一枚の魔法陣を起動する。それは黄金に輝く、特別な魔法だった。


「褒めてもらった礼だ。この読み合いをより複雑にする情報を与えよう」


「黄金の…魔法陣!?」


「ジェミニア……」


【ジェミニア_切断魔法】


 アトラスは魔法を発動すると、そっと剣先を地に降ろす。すると地面にスルスルと刃が入っていくではないか。プリンにナイフを入れる時の方が、まだ抵抗がある。彼が聖剣を持ち上げると、そこには地割れのような裂け目ができていた。


「…な!?」


「これは万物をただ斬る魔法。有機物、無機物、精神体、エネルギー…あらゆるモノを一刀両断する」


 その言葉を聞いて、流石のユニも額から汗が流れる。あの剣先が身体に触れたら…考えただけで全身に鳥肌が立つ。下手に攻撃できず…硬直状態が続く。

 この沈黙を破ったのは、またしてもアトラス…ではなくレードルだった。彼は自身の刀を構えると、真っすぐに敵へと斬り込んだ!


 ――この鬼人、恐怖がないのか!?


 この不意打ちにはアトラスも、仲間のユニですら面食らっていた。だがアトラスは冷静に眼前の男を分析する。これは恐怖に支配されての行動ではない。この鬼人は自身のなすべき事を理解しているのだ。故にアトラスはレードルの刀を聖剣で受け止めた。そして鬼人の愛刀を真っ二つに斬り飛ばす。


「ここまで何もできない…とは」とレードル…。


 唐突な鬼人の特攻は、失敗に終わったように見えた。だが今日の相棒――ユニは天才格闘家である。彼女はここで連携するだけの度胸と戦術眼を持ち合わせていた。それこそがレードルの真の狙いでもある。そしてアトラスの舌打ち。


「あのアイドル野郎は、どこに行った!?」


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