影縫いの光針魔法
「リュミエール・ソードッ」
【リュミエール・ソード_光剣を生成する魔法】
スフィアーレが扱う魔法は光。その輝きは様々なものを封じ麻痺させる。
光の剣は宙を舞い、フリュウポーチへと迫る。
「眩しい…剣だ」
剣の輝きは敵の視覚を妨げ、一方的な攻撃を可能としていた。ただし獣人のフリュウポーチは熱と殺気を頼りに攻撃を回避。二人は岩から岩へ飛び移り、崖の高低差を利用して、縦横無尽に斬り合っている。既にキャンディルは遥か後方に置き去りにされていた。
「す、凄すぎますです…」
高密度のエネルギーを持つ光剣は…ガーゴの安物装備で防ぎきれない。革どころか金属鎧でさえ、直撃すれば切断されてしまう。しかし彼女は大剣を自身の魔力で纏い、光の剣撃を受け止めた。
「ほう…」
「これで…終わり、だ」
一瞬の隙を突き、大剣の一撃がスフィアーレへと迫る。だが誘い出されていたのは、フリュウポーチの方であった。
「ゾディアック・バインド」
【ゾディアック・バインド_影縫いの光針魔法】
彼女の右脚が宙に浮いたまま、ピタリと停止する。フリュウポーチが振り返ると、自身の影、それも右脚のところに光の針が刺さっていた。彼女にとって初見の魔法だ。
「光はあらゆるものを封じ・麻痺させる。光剣で視界を奪い、その隙に影縫いで拘束をする…これが私のスタイルだ」
「…ふん」
フリュウポーチは大剣に魔力をまとわせ、自身の影を叩き斬った。光針が切断されると、脚の自由が戻る。だがしかし光剣と影縫いのコンボは厄介…剣を受ける一瞬の隙をついて、光針が陰に刺さる。次に狙われたのは右肩と左足。
「…!?」
「詰んだな」
利き手の側の肩を潰された。剣を振っても、身体が邪魔で左足まで届きそうにない。そして二つの針を順番に壊していく猶予はなかった。スフィアーレは複数の魔法陣を同時に起動する。
「これで終わりだ。ウォータン・レイピル!」
【ウォータン・レイピル_水牢を生成する魔法】
フリュウポーチは辛うじて大剣で防御。
「ならこれはどうだ。 ザンダ・ハンマー、ヴレア・ボール」
【ザンダ・ハンマー_雷槌を生成する魔法】
【ヴレア・ボール_火球を放つ魔法】
怒涛の連撃を繰り返す人形族の男。それを見た彼女はため息を吐いた。
「温い攻撃だ…お前は自分の魔法への誇りも薄そう…だ」
「勘違い野郎め、負け惜しみはいらん」
しかしフリュウポーチも魔法陣を起動…彼女の手元で緑色のそれが輝きを放つ。
「ふん、ガブリ・カプリ…」
【ガブリ・カプリ_斬りたいものだけ斬る魔法】
彼女は自身の身体ごと、針を叩き斬った。この魔法は斬りたいものだけを選んで斬る魔法。身体に剣を通すことで、大剣は最短ルート通ることが可能に。そしてフリュウポーチは一足飛びにスフィアーレとの距離を詰めた。
「ちっ、それが新魔法か!? ウーデン・ハーデン!」
【ウーデン・ハーデン_木材硬化の魔法】
彼は咄嗟に木製の皮膚を硬化させ、身体を鎧と化す。剣を透過されたら無意味だが…ゼロよりはいい。それに透過されたとて、男には勝算があった。スフィアーレの身体は人間とは異なり、体内のコアを撃ち抜かれなければ止まらない。この一撃は避け難い…が、ここであの魔法を見切る。
「ガブリ・カプリ…」
彼女の一撃は木の鎧を透過、体内の機構のみを断ち切る。そして数多あるパーツの中で、人形族のコアを正確に打ち抜いた。
「馬鹿な!? 透過こそ想定内だが…どうやってコアの位置を…」
「一番…動いてる音がした。あと油の匂いも」
「クソ、なんでこんな勘違い野郎に…いや、私は所詮、量産機…か」
「物を…大事にしろ」
物は大事にしているし、お前の魔法陣を馬鹿にしたこともない…心の中で訴えつつ、スフィアーレは地に伏した。フリュウポーチは彼の魔導書を拾い上げると、それを敵のバッグへと戻す。そして自身の魔法陣をしまい、大剣を布で巻いた。才能があらゆる暴論を正義へと昇華している。




