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男所帯の一致団結 3

「それで、このプリンなんですね」


テッドの呑気な呟きに、団員達は思う。〝いやいや、ちょっと待て。確かにプリンから話は始まった。けれど、今はそんなことはどうでもいい。それよりも婚約の話だ〟と。

ノー天気なテッドは、仲間によって後方へ追いやられていった。



「なるほど」


〝それだけ?あれだけ団長と親しいのに、それだけなのか?〟と、カーティスが細かいことを突っ込みもせず、たった一言で片づけてしまったことに内心で戸惑う団員達。そんな彼らを尻目に、カーティスは笑みを絶やさない。


「なんだ、カーティス」


さすがにフェルナンも腹黒なこの男の淡白な反応が気になり、眉間にしわを寄せた。なにかを企んでいるのではないかと。


「よかったねぇ」

「お、おい!!」


反応が薄いとフェルナンが訝しげに様子を伺っている間に、がばりとカーティスに抱きしめられていた。大柄な厳つい男に、細マッチョなイケメン(腹黒)が抱き着くこの光景はさすがにシュールすぎて、屈強な騎士達であっても狼狽えた。


「こ、これ、見ててもいいやつなのか?」

「もしかしてこの二人、過去に関係が……」

「なんだかんだ言って、仲いいもんな」


団員達が薄っすら目元を赤らめて、小声でやりとりし合った。この二人はそういう関係だったのかと。


「おい、カーティス!!暑苦しい」


フェルナンはすかさずカーティスを引きはがそうとするも、共に鍛え合ってきた男相手にそう簡単にはいかない。


「もう、ひどいなあ。僕がどれほど君の婚約を喜んでいるのか、わかってる?」


上目遣い(意図的)に問いかけるカーティスの姿は、周りにいろいろなことを妄想させる。


「ああ、ああ。ありがとう」

「言い方が雑すぎだから」


そういってフェルナンを小突くカーティスに、団員らは不本意にもドキドキさせられていた。

なんだろう、このいちゃつきとも言えるやりとりは……。

もちろん、カーティスによる若干真意の伝わりにくいいたずらにすぎないのだが、団員らはほんのわずかに二人の仲を疑ってしまった。



「ということで、いい?君達」


一通りいちゃつき倒したカーティスは、集まっている団員らをぐるりと指さして熱い視線を送った。さながら、なにか熱狂的な集まりのような様相を呈しいている。カーティスに返す団員達の視線もまた、熱狂的な色が見て取れる。


「今後、団が警備にあたる夜会から、フェルナン団長の当番を外す」

「何を言ってる、カーティス」


驚いて止めようとするフェルナンを、カーティスは遮った。


「何言ってるんだい、フェルナン。君は任務から外すから」


当然だろと言いたげなカーティスに、フェルナンは眉間に皺を寄せて真意を問う。


「なぜだ?」

「ジェシカ嬢と参加するために決まってるでしょ」


そうだ、そうだと、全員が興奮状態で前のめりに頷く。

そのあまりにも異様な団結状態に、さすがのフェルナンもわずかに後ずさった。


「お、おう。そうか」


これは受け入れざるを得ないと、気圧されるようにして頷くフェルナン。

しかし、冷静な部分ではまあよいかと判断していた。団員らの好意によってジェシカと過ごす時間が増えるというのなら本望だ。ここは彼らの好意に甘えようと。



「それから、君達!!」


カーティスの熱い呼びかけはまだ続く。


ここで団員達は忘れていた。確かに、カーティスはフェルナンの親友であることに間違いない。

だがこの男、実践的な実力はナンバーツーであるものの、その隠し切れない腹黒さと性格難、奔放な女性関係が理由で(加えて、本人の希望もあるとかないとか)、副団長に次ぐ三番手にすぎないということを。つまり、彼に決定権はない。あるとしたら、このむさ苦しい男達のどこかに埋もれている副団長だ。

しかし、気付けばほとんどの団員が集まっており、この中から副団長を見つけるなど相当難しそうだ。見つけ出されたとしても、今のこの雰囲気の中では副団長も認めざるを得ないだろうが。



「団長とジェシカ嬢が夜会に出席した際は、何をさしおいても二人をお守りするように!!」


(それはダメだろう……)

カーティスの常軌を逸したシャウトに疑問を感じたのはフェルナンだけだ。すっかり洗脳状態にある騎士達は、〝おぉ――!!〟とこぶしを突き上げている。


(なんだ、このいつにない団結感は……)

戸惑うフェルナンをよそに、ついには円陣まで組み出した彼らは、〝ほら、団長も。ほら〟と、それはもうよい笑顔で謎の誘いをかけてくる。


「いや、私は二人の婚約を広めて欲しいと企んだだけなのだが……」


と言うフェルナンの呟きは拾われず。

いや、唯一聞こえていたカーティスは親友の呟きを聞き流して、その腕をとって強引に円陣の中に引き込んだ。



「野郎ども、わかったな!!」


「「「おぉ―――――――!!」」」



何の集団なのか、もはやフェルナンにもわからなくなっていた。

それでも、慕ってくれた故だとはわかっていただけに、今回は自分のあずかり知らぬことだとしておこうと決めた。




* * *


騎士達の上げた野太い雄叫びは、団の詰め所を超えて城の方にも聞こえていたようで……。


やや歳いった者達が〝すわ、戦か!?〟と狼狽え、急ぎ足で会議室へ向かっていた宰相は思わずつんのめったらしい。


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