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噂の美人令嬢の実態 2

それからしばらく遊びに付き合っていると、おやつの時間になった


「みんなの憧れの騎士様達も、一緒に休憩されることになりました。せっかくの機会です。いろいろお話ししてみるといいわ」


子ども達が嬉しそうな声を上げた。これも仕事の一環なのだろうかと思ったけれど、そうではないらしい。どこの国でも子ども達にとって騎士は憧れの存在だ。子ども達の熱い視線を感じて、それならと騎士の方から申し出てくれたようだ。作業はまだ残っており、外で一緒に遊ぶことはできない代わりに一緒に過ごすぐらいと。ありがたい心遣いだ。

ジェシカも準備を手伝っていた。どうやら焼いてきたクッキーは、騎士達に出す分もありそうだ。冷たいレモン水に、クッキー。それからもともと用意されていたパウンドケーキ。その横には、リンゴのジャムも添えられている。レモンもリンゴも、敷地内に植えられた木から収穫したものだ。特にジャムは孤児院のバザーでも売り出しており、ジェシカもお気に入りの一品だ。


「さあさあ。間に騎士様に入ってもらって……ああ、サリー。膝の上はダメよ。それではお菓子をあげられないわ。ダニーもよ」


めったに接することのない〝外の人〟に、子ども達はここぞとばかりにかかわろうとする。膝に座るなんて可愛いもので、中には肩によじ登ろうとする子もいた。それを注意すると、騎士の方から止められてしまう。彼らはこういうかかわりに慣れているのか、ひょいっと抱きかかえてストンと隣に座らせた。不思議なもので、そうされた子ども達は再びよじ登ろうとはしない。ちゃんとその場に座って待てるのだ。


「今日のおやつは、ジェシカお姉さんが作ってきてくれたクッキーと……」

「やったぁ!!お姉ちゃんのクッキー大好き!!」


子ども達の反応に、にっこりほほ笑むジェシカ。作ってきた甲斐があるというものだ。


「それからパウンドケーキと、横のリンゴジャムは孤児院特製のものよ」


もう待ちきれないと言った様子の子ども達に苦笑して、挨拶の号令をかける。その頃には、ジェシカも子ども達の間にまざっていた。


「ジェシカお姉ちゃん、クッキー美味しい!!」

「そう?よかった」

隣に座ったエミリーが、口の中をクッキーでいっぱいにしながら必死に話しかけてくる。本当ならばマナー面で注意するところかもしれないけれど、それよりもその様子を可愛く感じたジェシカは、咎めることなくハンカチでエミリーの口元を拭ってやった。


「ほおう。このクッキーはジェシカ嬢のお手製か」


どことなく聞き覚えのある低い声に、自分の左の少し離れた方へ視線を向けた。そこには大柄な騎士がどっかりと座り、ジェシカの持参したクッキーをしげしげと見つめていた。


「そうだよ!!ジェシカお姉ちゃんは、いろんなお菓子を作ってくれるの」

「クッキー以外も作ってくれるよ」

「こういうケーキも作ってくれたことがあるし、ブドウのジャムをくれたこともあるよ」


「それはすごいな」


そのやりとりを見つめながら、声の主に気が付いたジェシカは満面の笑みを浮かべた。


「団長さんね!!」

「いかにも」


ちょっと厳つい雰囲気のフェルナンが、にやりと笑った。


「お姉ちゃん、この騎士様を知ってるの?」


不思議そうに尋ねるエミリーに、ジェシカは得意げに言う。


「ええ、そうよ。フェルナン騎士団長様は、私の同志なんですから」

「同志?」


“ぶほっ”と吹き出すフェルナンと、首をひねる子ども達。他の騎士達がその様子を驚いた顔で見ていた。


「そう、同志よ。私も団長さんも、食べ物は大事にするべき!!って思う同志よ」


さすがにこらえきれなかったのか、フェルナンが本格的に笑い出した。それを気にも留めず、胸を張って答えるジェシカ。


「じゃあ、私もだ!!」

「僕も!!」


途端に近くにいた子ども達が騒ぎ出し、さすがにいきすぎかとジェシカがいさめた。

でもこの“同志騒動”のおかげで、子ども達にとって騎士は憧れるだけでなく、親しみも抱いたようだ。厳ついフェルナンに対して恐れることもなく話しかける子ども達を、ジェシカは満足そうに見つめた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] とにかくジェシカ嬢がカワイイ。 自分がやりたい事に素直で、悪意を持たないいい子。 ちょっと常識外れのところもあるけど、それもまた彼女の魅力。 [一言] 更新たのしみにしてます。 頑張って…
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