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第六話『母の末路』


「藤乃ちゃん! 藤乃ちゃーんっ!」


十年前、男性から逃げて走っていた時。

千代の声が遠くに聞こえた。


「千代さん…千代さんっ!」


必死に声を辿って、千代の姿を探して強い力で抱きついた。

藤乃が柵から落ちた事は、屋敷の中ですぐに問題になっていた。

その後、すぐに承認が藤乃を探していたのだ。


「さぁ、屋敷へ戻りましょう」


そう言って、藤乃の手を握り二人は屋敷へ戻った。

屋敷へ繋がる階段を登ると、陽が傾き普段なら閑静としているが使用人の屋敷の方が騒がしかった。


「あれはお前の仕組んだ事か」


当主が華恵に凄んでおり、揉めていた。


「違います…! 私はそのような事…!」


詰め寄る当主に、華恵が必死に答えるが使用人の一人が口を開いた。


「藤乃ちゃんに、前から酷い事をしていたじゃないですか…!」

「実子にあのような事…! 許されません!」

「それに、見てましたよ…! 裏庭で藤乃ちゃんを突き飛ばして柵が壊れて落ちるところを…!」


口々に華恵を責める文言ばかり。

しかも、目撃していた者もいて華恵の逃げ場は無くなってしまった。

だんだんと声が大きくなったところで、当主が片手を上げた。


「もういい。ーー華恵。今晩中に屋敷から出て行け」

「…え?」


華恵が絶望した表情で、ぽかんと当主を見つめた。


「そんな…どうして…」

「どうして? 決まっているだろ、水瀬家の娘に手をかけた。その罪は重い。すぐに能力を開花させられない不便な思いをさせた上に殺そうとするなどーーお前は母親失格で、この屋敷にいるだけで士気を下げている」


冷たく言い放つと、当主は屋敷に戻ってしまった。


藤乃が母に「さようなら」を伝えることすらできなかった。


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