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紅蓮の魔女  作者: 宵宮 詠
第2章
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8/25

1 宴


魔女たちが会議という名の酒盛りをしている頃、

城もまた、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎだった。

紅蓮が勝手知ったる他人のお城とばかりに

王を引き摺って長い廊下を進む。

そこはまさに野戦病院の有り様だった。が。


メイドさんが両手から癒しの光を放つ。

妖精にしか見えない小さな生き物も光る。

アラクネが糸を吐き傷口を覆っていく。


そして癒えた者達は我先にと広間へ駆け出し、傷が癒えても立てない者達は

「Nooooooo!!!」と叫びながら反対方向へ引き摺られていく。


遠くから、勝ちどきと笑い声、乾杯の音頭が聞こえてきて、紅蓮は合点がいった。


(そりゃ門のとこで待ってるわけだ……)


そして王が広間へ着いた。


うぉぉぉぉおお!


広間を揺らす歓声が響いた。


「さあ皆様!主役は遅れてやってくる!

我らが王の、登場でーーーーーす!」


メイドさんの鈴を転がすような声が

口元に構えた魔晶石に増幅されて広間に響き渡る。


「うぉぉぉおおおおおっ!」


広間はもう一度揺れた。


王はゆったりと玉座への段を登り、

メイドさんが差し出した魔晶石を手にして広間へ向き直る。

王は片手を上げた。

シン、と静けさが広がる。


「あー…… テス、テス。

……皆の者。其方らの奮迅の働きにより、反乱軍は尻尾を巻いて退却した。」


「うぉぉぉぉおおおおっ!」


紅蓮も拳を突き上げて叫んだ。


「今宵は存分に飲め!歌え!祝え!我らが、勝利である!」


「うぉぉぉおおおおおっ!」


王が玉座を降りる。

魔晶石を受け取ったメイドさんの声が高らかに謳った。


「さあ、みんな!無礼講だぁぁぁああああっ!」


紅蓮はいつのまにか杯を握らされ、

いつのまにか乾杯の数もわからなくなる。


「烈火殿!素晴らしいお働きでした!!!」

「姐御に乾杯!!!」

「ありがとうございます烈火殿!!!」


揉みくちゃにされながら、紅蓮は声をあげて笑う。


「みんな頑張った!勝利にかんぱーーーい!」


勝ち戦の後の宴の熱が、紅蓮は好きだった。

それは死線をくぐった者だけが知る命の讃歌だ。

戻らない者を悼むのは明日で良い。

今は生きている事を、力いっぱい謳うのだ。


歓声と乾杯の嵐に目を細め、紅蓮はするりと人波を抜けてバルコニーを目指した。

熱気に火照った身に風が心地良い。

と、バルコニーの片隅に、人影が映った。


「王様!」


一目見ただけで紅蓮はその名を呼んで、タタタと駆け寄った。

手すりに腕を重ねて中庭に視線を遊ばせる横顔を眺めながら、するりとその影に並んだ。

王は深紅を一瞥し、軽く頷くと庭園へと紫紺を戻す。

紅蓮はその静かな佇まいに倣うように、

黙って杯を口に運んだ。


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