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紅蓮の魔女  作者: 宵宮 詠
第1章
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7 ワルプルギス


その夜は年に一度魔女達が会す、

「ワルプルギスの夜」だった。

今年の主催である祈りの魔女が設えた空間は、夜空に浮かぶドームだ。

雲の絨毯を透き通る半球が覆い、瀟洒なテーブルセットが、月と魔法の光に夢幻のように照らし出されている。


そこに、一人、また一人と魔女が跳んで

姿を現す。


「久しぶりじゃの、宵森。皺が増えたか?」


「馬鹿言ってんじゃないよ、風谷。あんたこそ腰が曲がったんじゃないのかい?」


年寄りコンビがお約束の「不老ジョーク」を交わす中、二つの影がするりとドームを抜けて「飛んで」きた。


「やっほー、みんなー」


ピンクのローブにとんがり帽子。そして箒に横座りした花守が、ひらひらと手を振りながら降りてくる。

その後ろには漆黒のローブにとんがり帽子。

そして箒に跨った夜天が続く。


「あらあら、『魔女』のコスプレかしら。

可愛らしいわね?」


祈りがくすくすと笑う。


「だってさー、夜天、座標で跳べないじゃーん?

だから迎えに行ったんだけど、ウッキウキでとんがり帽子被ってんだもん。そりゃー乗るしかないっしょ。」


ケラケラと笑う花守の後ろで夜天がぶんぶんと頷いた。


「様式美です!」



やがて魔女六人が席へと着く。一脚空いていた。夜天は首を傾げる。


「あれ……?六人……?」


全員がハッとした。気配が消えたのは気づいていた。

ただ、いつもの事過ぎて誰も気にしていなかった。


「紅蓮か。」


「どうしたのかしら。」


「えー、会えんの超楽しみだったのにー」


「またどこぞで迷子になっとるんかの」


「全くアイツは。ちょいと飛ばしてみるよ。」


宵森が手の平に銀の光球を生む。

それにぶつぶつと何事かを告げると

光はふわりと浮き上がり、ふっと姿を消した。


光の気配を追っていた宵森が首を捻った。


「……うん?……」


五人の視線が向く。


「あっ!……あんの、小娘ぇぇええっ……!」


宵森の顔が真っ赤になったかと思えば、

バン!とテーブルを叩いて立ち上がる。


「あらまあ、どうしたの?宵森。」


祈りが柔らかに問いかける。

宵森はダンダンと床を踏み鳴らす……つもりだったが、雲のふわふわにその音は吸い取られた。


「アイツ、光を握り潰しやがったよ!」


宵森が鼻息荒く叫ぶと、一同はギョッとした。


「あれって……握り潰せる物だったんだ……」


夜天が呆然と呟くと、


「ひゅー、物理こぇー」


花守が感嘆して笑う。


「光が届くのなら帰って来られるという事だ。」


迷宮が淡々と言うと


「ま、心配いらんと言うことじゃな。」


風谷が顎ひげを撫で下ろしながら頷いた。


「とはいえ……」


祈りが愁眉を寄せると


「ワルプルギスの欠席が許されるのは親の死に目と相場が決まっておるわ!

あやつ帰ってきたら目にもの見せてくれる!」


宵森が吠えた。


「……親がいる人手ぇ挙げろー……」


花守が遠い目で呟く。


「まあまあまあまあ。ね?ほら宵森!

モーズさんから分けてもらって来たよ!

じゃーん!ドワーフの火酒!飲も飲も?」


夜天がドン!と瀟洒なテーブルに無骨な酒瓶を乗せる。

それを機に銘々が思い思いの酒やつまみを取り出した。


「火酒!?夜天!あんたあたしを殺す気かい!」


宵森の叫び声を聞きながら、花守は思った。


「……魔女のコンプラこえぇ……」

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