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紅蓮の魔女  作者: 宵宮 詠
第1章
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6 帰還


「王様ーーー!」


王が近衛の背に迫る刃を紫紺の光で受け止めた時、空から声が響いた。

押し返そうとした刹那、「えい!」と火球が降ってきて、刃を持ち主ごとジュ、と溶かした。


王は息を呑む。

そんな紫紺の隣に降り立ち、紅蓮は笑った。


「左翼殲滅した。そこから逃して。

殿しんがりやるから、王様とみんなはこのまま進んで、部隊と合流して。」


王が何か言い返そうとするも紅蓮は瞬く間に空へ飛び立ち、囲まれた近衛に火球を投げて突破口を作る。

王は一つ頷くと馬を駆った。

近衛達の前へ出ると躊躇いなく敵兵を薙ぎ払う。物言いたげに向く視線達に声を張る。


「殿は烈火殿が務める。左翼に向け血路を開く!」


その後は圧倒的だった。

先頭に立った王が薙ぎ払い、近衛らが掃討する。追ってくる者、囲い込んでくる者達を紅蓮が燃やし尽くす。


そして中央戦線を背後から叩いていた部隊が、

包囲されていた前線部隊が、合流した。

もう数の利さえ覆す状況だった。

遂に敵軍を突破し、帰還が号された。

紅蓮は、笑った。



「紅蓮の魔女が令す


暗き淵にて荒ぶる焔よ


息づき脈打つ浄化の焔よ


今こそ地界より湧き出で


我が推しに仇為す者に


その猛々しきを見せしめん


【イグニス・プルガトリ(煉獄の烈火)】」



地面が揺れた。

地を割り、火柱が立ち上がる。

守るべき者がいなくなった戦場に容赦なく炎が噴き上がり、残党を飲み込んで行った。


運良く逃れた者をそのままに、

魔女は帰還の途についた。

城の門をくぐると、王が立っていた。

紅蓮はふわりと降り立ち、満面の笑みを浮かべて王に向かう。


「え、待っててくれたの?うれしー♪」


弾む声に重い声が返す。


「……烈火殿。此度は貴殿の力で失わずに済んだ命も多かった。礼を言う。」


魔女はもじもじと照れた。


「え、え、そんな、一宿一飯の恩返しだから……お礼なんて良いのにぃ……」


「が、一つ訊きたい。貴殿は何故…「グレン。」


王の言葉に紅蓮の声がカットインする。

王は目を瞬かせた。


「あたしの呼び名はグレン。後『貴殿』もいらない。

お前とかでいい。」


「……あー……ええと、では、グレン、殿」


「グレン。」


「……グレン。」


魔女はこくこく頷いた。


「グレン。其方、何故我らに躊躇いもなく手を貸した?」


「え、一宿一飯の…「それはもう聞いた。」


王のカットインのターンだ。


「それはそれとして。其方は我らと反乱軍の因縁を知るまい。反乱軍の側に其方の理があるやも知れぬとは思わぬのか?」


紅蓮は首を傾げた。


「……えーっと。『もしかしたらあっち側の戦う理由の方が、あたし的に賛成できるかもしれないのになんで?』って事で合ってるよね?」


王は重く頷く。


「んー……。あたしは、傭兵でもある。

お金じゃなくて恩をもらってその分働く。

それであたしが手を貸す理由には充分だよ。」


(推しの役に立てるなら本望です!)


心の声は辛うじて漏れなかった。


「……ふむ。」


王が腕を組み、じっと紅蓮の目を見る。

紅蓮がひたと見返す。

遂にすぅっと視線を逸らしたその時、不意に銀色の光が現れた。


光は、くるん、と深紅の周りを飛んだ。

ハッとした紅蓮がバッと掴み取る。

王の眉がスッと上がった。

光が喚く。


「ちょいと紅蓮!あんた何やっ……」


ぶち。紅蓮は、剣士の握力で握り潰した。


「おま、それ……」


「虫!なんか虫がいたみたい!」


「いや、しゃべって……」


「気にしない気にしない!気にしたら負け!

ほらほら中入ろ?こんなとこで立ち話もなんですから!」


「いやこれ我の城……」


紅蓮はグイグイと王を引っ張った。


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