表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/54

3 魔王


「つーかそれ、紅蓮も悪いじゃーん。

あん時おーさまの魔法で帰ってたら不法入国じゃなかったんじゃん?

あんたおーさまの詠唱ぶた切ってテレポルしてたじゃんよ。」


「ぐぅっ!」


「花ちゃん……」


紅蓮が胸を押さえ、夜天が涙目で花守を見つめた。


「夜天、代わりに浄化してやったんだかんな!貸し一個だかんな!」


「わかった。今度なんか奢る……紅蓮、ありがと。」


花守がやれやれと肩を竦めた。

新しいお茶と菓子を持って来る。

サクサクと菓子を齧る三重奏が響いた。


「けど紅蓮、なんでテレポルで王様のところに戻らないの?不法入国だから?」


夜天が不思議そうに夜色を向ける。


「……うん。」


「紅蓮にしちゃずいぶん殊勝じゃーん?」


「……レオンに迷惑かけちゃうんだ。それに……

もう戦さは終わったから……雇用契約も満了だしさ」


サクサクの三重奏が再び奏でられる。


夜天がぽそりと言った。


「こっちに来た時、王様とっても大事そうに紅蓮のこと抱っこしてたよ……?」


「……二回もぺぃってされた。」


夜天がぐぅっと黙った。


「けど結局はあんたによろしくされたじゃーん」


紅蓮が黙り込む。


「……雇用契約が終わっても、推し活は永遠だよ……?」


夜天がおずおずと口を開いた。


「……ダメ、なんだ。」


紅蓮の絞り出すような呟きに、二人はじっと紅蓮を見つめた。


「……『王様』ってお仕事はね、呪われてるんだって。もしも呪いが発動したら、レオンは『魔王』になっちゃうんだって。」


二人は息を飲んだ。


「その時、レオンはあたしの敵になっちゃうから……側にいちゃ、いけないんだって……」


紅蓮がポロポロと涙を零す。


「ちょ、待って待って!前の侵略も『裏』の王様が呪いで魔王になったって事なん?」


紅蓮がこくこくと頷く。


「……呪いって、絶対発動しちゃうの……?

魔王戦から千年以上経ってるよ……?」


紅蓮が震える息を吸い込んだ。


「絶対じゃないんだって……発動条件もわかんないんだって……けど、魔王戦からこれだけ経っても、まだ位相の裂け目が残ってるだろ?」


夜天がこくりと頷く。賢者は今でも裂け目を塞ぎ、結界柱を手入れし続けている。


「だからレオンは、『表裏の不可侵』を重視してるんだ。あたしのせいでこっちに来た時も、ほんとは怖かったと思うんだ。だからあたしは、もうテレポルで帰れないんだ。レオンにいっぱい迷惑かけちゃうから……」


ポロポロと涙を零しながら、紅蓮が手首を見せる。そこに嵌っているのは、魔女になりたての頃、火事の悪夢を見ると炎を噴き上げる紅蓮に風谷が渡した、魔力抑制の腕輪だった。


「あんたそれ……なんでつけてんの……?」


「だから紅蓮の魔力が弱くなってたんだね……」


紅蓮が息を整える。


「あたしさぁ、寝惚けると跳んじゃうんだ。レオンのとこに。」


二人が紅茶を吹きかけた。


「「はぁ!?」」


「……無意識に跳んじゃう、レオンのとこに。

だから風谷の腕輪で抑えてた。」


「紅蓮それ……」


夜天は続く言葉を飲み込んだ。

飲み込んだ言葉を花守が吐いた。


「『愛』じゃーん。」


紅蓮がきょとんと目を見開いた。


「当たり前じゃん。推しへの愛だよ!」


(そうじゃない)


魔女二人の総意であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ