6 王
「クソ夜天……浄化しなかったな……」
ぶちぶちと文句を言う紅蓮に王が問う。
「お前は浄化はできるのか?」
レオンヴァルドの常より一段低い声が紅蓮の耳朶を打った。
紅蓮は砕けそうになる腰に鞭打った。
「できる。けど詠唱は長いよ。」
「重畳。我は門を開く。」
次々に押し寄せる触手を斬り飛ばし斬り飛ばししながらレオンヴァルドが頷いた。
「アルダラ!護れ!」
アルダラがひと蹴りで跳躍した。
剣を振り下ろしながら着地する。
触手の群れが両断され、再びのたくった。
「馬鹿のひとつ覚えねぇ」
「そしてキリがないよ」
「ケリを着ける。誰が王なのか見せてくれる。」
紫紺の瞳が爛々と燃えていた。
「激おこの王様もカッコいい……」
「……馬鹿のひとつ覚えねぇ。」
アルダラが盛大に溜息を吐き、触手を斬り飛ばした。
紅蓮とレオンヴァルドが上空に飛んだ。
追って来られるのは吸血鬼もどきの触手のみだ。
アルダラと獣人部隊が触手刈りに勤しむ。
「ねー、これしか出来ないの?」
「ぐぅっ!」
アルダラのウンザリした声が吸血鬼もどきにクリーンヒットした。
「う、うるさい!ちゃんとした血を啜って高貴なる紫の魔力さえ取り戻せば……っ!」
「じゃあ無理ねぇ。濁ったまんま消えなさい?」
「黙れ!クソ、クソ、クソォォオッ!」
触手が怒りのままにアルダラへ向かう。
アルダラがニヤリと笑った。
上空で、レオンヴァルドと紅蓮が背中合わせに浮いていた。
紫紺の陽炎と紅蓮の炎が妖精の光に照らされる。
二つの詠唱が対旋律のように響き合う。
「紅蓮の魔女が希う
死を拒む穢れに終焉を
偽りの命に灼滅を
巡る天輪よ
万物を育む黄金の焔よ
その御力を月へと託し賜え
今こそ境界の狭間に巣食う
深き闇を暴き出せ
呪われた血脈を断て
永劫を騙る亡者を
魂を縛る楔ごと
慈悲なき灰燼へ帰せ
照らせ
灼け
浄滅せよ
【イグニス・ソラリス(日輪の烈火)】」
紅蓮が両手を高々と天に掲げた。
練り上げられた魔力が炎の龍のように天へ昇って行く。
妖精の光が炎を避ける。
龍が雲を割り、ヴェールを無くした月光が龍を照らす。
紅蓮の炎が、黄金に揺らめき始めた。
その背で王の朗々とした詠唱が響く。
「王の名に刻まれし
古き盟約において命じる
門の番人よ
次元の番人よ
位相を護り
点と点を司る者よ
束の間の眠りから目覚め
我が声に応えよ
その境界を踏み越えし者を
番人の名に於いて裁け
我が力を対価とし
今我が位相へ顕現せよ
———召喚」




