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紅蓮の魔女  作者: 宵宮 詠
第1章
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4/35

4 見参


重いカーテンの隙間から、薄ぼんやりとした朝日が差し込んだ。壁を彩る織り物に柔らかな光の筋が浮かぶ。

炎の色に縁取られた瞼がピクピクと震え、ゆっくりと持ち上げられた。


(知らない天井だ……)


紅蓮は瞬きをして、そろそろと身を起こす。

眩暈はない。グーパーグーパーと手を動かす。


「ん。そこそこ回復。」


言うと、「とぅ!」とベッドから跳ね起きた。

紅蓮の自室よりも遥かに豪華な一室だった。

にへ、と顔が崩れる。

なんだかんだ客人扱いされている。


(王様尊い……王様に会いに行こう!)


扉に手をかけた。取手が重い。

後で油差しておかなきゃと思いながら、紅蓮はグイっと押し開いた。

右見て左見て、何もわからない。

紅蓮は玉座に座る王を思い描き、跳んだ。




「……して、状況は。」


「はっ、前線は辛うじて持ち堪えておりますがジリジリと後退。援軍を出さねば数刻で城まで到達するかと。」


「アルダラは?」


「しょ、将軍は…… 休暇中であります!!!」


「……oh……」


王は額に手を当てた。部下の福利厚生は大切だ。年に一度の長期休暇システムは王自身が作った。そう、誰のせいでもない。

ただ、巡り合わせが悪かっただけだ……。


「うむ。では我が……」


王が玉座を立とうとしたその時、ぽわんと目の前に赤い影が現れた。


「王様♪」


ザワ、と広間の空気が揺れる。


「……封じておけと言ったはずだが。」


地を這うような声が広間に冷気を運んだ。


「しました!ちゃんと、二重に!」


泣きそうな側近の声が響く。紅蓮は首を傾げた。


「あ。扉すごく固いと思ったら、封印されてたんだね?良かった、油差しておいてって言おうと思ってた。」


(何一つ良くない)


広間の総意だった。


「……して、このタイミングでここに来るとは、其方やはり間諜か?」


王の底冷えた声が響く。昨日よりも更に低い声に、紅蓮はゾクゾクと震えた。


「はー、尊…… あ、いやいや。

あたしただの『魔女』ですから!」


途端、また広間がざわめいた。

紅の瞳が、ん?と周囲を見渡す。


「……あれ。何か、取り込み中だった……?」


今更ながら、広間は何やら物々しい。

軍服の者達が王を囲み、伝令が入れ替わり走っている。


「其方には関係のない事だ。大人しく部屋に戻れ。勝手に振る舞うことまかりならん。」


ザッと兵が囲いに来る。

紅蓮は、ぽわぽわん、と空へ逃れた。その時。


「伝令!!! 前線右翼決壊しました!!!

中央、左翼、抵抗していますが包囲されつつあります!!!」


転がり込んできた声に、ザッと空気が変わる。


「出る。」


王が立ち上がった。


「行く。」


紅蓮が呼応した。


「「「は???」」」


広間の総意だった。


「ふざけるな!遊びではない!其方はすっこんでろ!!!」


紫紺の声が轟き、紅蓮は無言で手を払った。

シュン!と指輪から炎の剣が生まれる。


「一宿一飯の恩をお返しする。

  ————烈火の魔術師、見参。」


紅蓮は、派手に笑った。






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