3 出会い?
「……えーっと?ここはガルディアの『魅惑の食彩亭』では……???」
「……ないな。」
王の低音の美声が、紅蓮の身体の芯を震わせた。
「はぅっ!!!」
紅蓮が胸を押さえたと同時に「ジャキーン!」と紫紺色の刃が空に現れ、ぐるり四方八方から紅蓮に向けられる。
「わわわわわ!?
ちょちょ、ちょっと待ったぁーーー!!!」
紅蓮が慌てて両手を掲げる。
王の目が物騒に細められた。
「……この城に転移してくるなど……貴様何者だ。
ドルクの手先か。」
紅蓮は深紅の髪が残像を引くほど首を振る。
「ド、ドルクなんて知り合いいないから!
あたしはちょっと転移に失敗しただけの魔術師で……」
「一介の魔術師がスタッフオンリー扉を潜れるわけがなかろう。」
「そ、そう言えばそんな札、見たような見なかったような……」
王が額を押さえた。
「あ、あたしは!『烈火の魔術師』って呼ばれてるA級冒険者で!」
王の目がキラリと光り、ジャキン!と威嚇するかのように刃が鳴った。
紅蓮は、はふ、とため息を吐いた。
「……『紅蓮の魔女』。
これがあたしのほんとの名前……。」
紫紺が大きく見開かれる。
「……『表』の、魔女か。」
「……え、ここ『裏』なの!?え、待って待って!?」
紅蓮は今更ながらあたりを見回し、
玉座に腰掛けるその姿をまじまじと眺める。
どくん、と鼓動が跳ねた。
首筋と額に落ち掛かる艶やかな紫紺の髪。
寄せられた眉根と、その下の鋭利な紫紺の瞳。
煌びやかではなくとも一見して上質とわかる、黒い軍服風の上下。
肩から玉座に添い、床ギリギリに流れ落ちる、深い深い紫紺のマント。
こくりと紅蓮の喉が鳴った。
「魔王……?」
紫紺が口元を歪める。
「そう呼ぶのは表の者だけだが、な。」
美低音のニヒルな響きに、紅蓮は胸を押さえて切なげに眉を寄せた。
ああ、鼓動が早い。
「……恐れずとも良い。間違えただけなら疾くと往ね。さすれば命は取らんでやろう。」
紅蓮はまたぶんぶんと首を振る。
「……か、か、帰り方がわかりません……!」
思わず口から、飛び出た。
「は?」
紅蓮はあわあわと言い訳を考える。
「そ、それに!魔力が足りない……」
言うと、何やら本当に眩暈がした。
「あ、れれ……?」
紅蓮の身体が、ゆっくりと傾いで行く。
「嘘だろおい!!!」
慌てる紫紺が視界に薄らと映る。
(はー、崩れた王様、尊し……)
思いながら紅蓮の意識はフェイドアウトした。




