4 ヘタレ
紅蓮の魔女第6章4
4 ヘタレ
後は執務室で、と言うレオンヴァルドの言葉で三人は廊下を進んだ。
レオンヴァルドとアルダラが大股でスタスタと歩く間を紅蓮はほぼ小走りだった。
紅蓮は体格差を恨んだ。
執務室のソファに腰を下ろす。
テーブルを挟んで紅蓮とレオンヴァルドが並び向かいにアルダラという配置はいつの間にか定位置となっていた。
「それにしても魔力が狙われるというのはかなり厄介だな。グレン、お前どうする?」
紫紺が深紅を見下ろした。
「剣だけでも戦えるよ?まあ一騎当千とはいかないけど。」
レオンヴァルドの手が紅蓮の頭にぽすんと乗った。
「次の戦さではお前は俺の横にいろ」
紅蓮が目を瞬いてレオンヴァルドを見上げる。
向かいでアルダラが「私いらなくない?」と思いながら、光がふよふよ運んできた紅茶に口をつけた。
「……『亡者』を知っているか?」
レオンヴァルドの声に、アルダラが組んだ足を解いた。
「位相の狭間に落ちた者達の成れの果てだ。魔力を喰らう。」
紅蓮とアルダラの背筋が伸びた。
「が、亡者に自我はない。飢餓だけが残った亡霊のようなものだ。グレン、ドルクを回収していったヤツは言葉を発したのだったな?」
「うん。ねちょっとした、なんか神経を逆撫でするような、イラッとする話し方だった。」
「……どんな奴か想像がつくわねぇ」
「亡者ではない、魔力を喰らう、ねっちょり野郎か……」
三者三様に未知の敵に思いを馳せ、顔を顰めた。
「ところで二人はどこまでいったの?」
唐突にアルダラの声が空気を割った。
「風谷の魔女が住んでる渓谷まで行ったよ。
竜の棲家らしいんだ。一回も見た事ないけどね!」
「竜……」
アルダラが呟き、ぶふ、と噴き出した。
「グレン、ナイスだ」
レオンヴァルドが横を向いて肩を震わせる。
紅蓮が首を傾げた。
「グレン、一晩レオンヴァルドの腕の中にいて答えがそれなの?」
笑いの混ざった呆れ声が聞こえ、レオンヴァルドがピシッと固まった。
「アルダラ何故知ってる」
「目の前で消えたもの。『王様尊い』って寝言言って。」
紅蓮がピシッと固まった。
ギギギ、とレオンヴァルドを見上げる。
「……そういうカラクリか。」
「ごめんなさい……」
見下ろす紫紺に紅蓮の眉がへにゃりと下がった。
「まあお前の魔力が暴走してた間はああやって寝てたからな。寝ぼけて戻ってきてもまあ仕方ない。次から気をつけろ。」
レオンヴァルドが紅蓮の頭をぽんぽんと叩いた。
アルダラは腕を組んで「このヘタレ」と心中で呟き、尾をパタリと揺らした。




