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3 消失


アルダラは早起きをした。

目を覚ましたレオンヴァルドの絶叫が楽しみで、ワクワクしながら早起きをした。

ベッドの上で枕を抱えてごろんごろんと寝返りを打つ。


「うふふふふ、まだかなまだかなー」


尻尾がパタパタとシーツを叩いたその時、

けたたましい警報が響いた。


「東第二砦に敵襲あり!東第二砦に敵襲あり!」


館内放送が叫び、アルダラはベッドから転げ落ちる。


「なんで今なのよ!?」



レオンヴァルドはパチリと目を開けた。腕に抱えたものを見下ろすと、深紅の瞳と視線が交わった。


二人は見つめ合い頬を染めなかった。

深紅と紫紺の瞳が揺れ、そっと二つの影が重ならなかった。

紅蓮は尊死しなかったしレオンヴァルドは絶叫しなかった。


ただ揃って一つ頷き、紅蓮が掻き消えた。


レオンヴァルドは消えた温もりの形のままの、自分の腕を一瞥した。

そして跳ね起きると着替え広間へ向かう。


紅蓮もまた跳んだ自室で着替えていた。

いつの間にかアラクネが現れ新しいマントを紅蓮に着せ掛ける。

不燃の魔法陣が三つに増えていた。


広間に着くと息も絶え絶えの犬科の獣人が玉座に座る王に報告を上げていた。


「突然空爆を受けたんです!夜中なのに!そして出撃した者達の半数が……消えました……。残ったのは我々、魔力なしのみです……」


「消え、た……?」


レオンヴァルドが呻くように繰り返す。


「何か……触手のような、何かが地面から出てきて……魔力持ちを引きずり込んだんです!」


報告の声が悲鳴のように響いた。


紅蓮は背筋がぞわぞわ粟立つのを感じた。

ドルクを回収して地面に消えた魔力。

紅蓮の空爆作戦の際に感じた悪寒。


「王様。それが例の『ヤバい力』だ。先の戦いで、ドルクを回収して行った触手にもぞわぞわ悪寒がした。」


「空爆の時の『魔力がトリガーになる罠』も説明がつくわね」


アルダラが頷いた。


「……それにしても、9時5時の紳士協定を破ってくるとはな……」


レオンヴァルドが再び呻いた。


「全砦に通達せよ。三交代制二十四時間の警戒体制を敷く様に。魔力なしを中心に編成し、魔力の不用意な行使を禁ずる。……時間外手当は出す。」


通信班がバタバタと広間を出ていく。

それを機にレオンヴァルドが集まっていた将校達に告げた。


「城の警備体制も砦に準ぜよ。各隊待機。」


アルダラと紅蓮のみが玉座の傍に残る。


「……あの時、なんとも言えない汚ったない色の魔力が、触手みたいにドルクを地面に引きずり込んだんだ。その時さ、ねちょっとした声が『仕方のない人ですねぇ』とかなんとか言うのが聞こえたんだ。そいつが黒幕かも知れない。」


紅蓮の言葉にアルダラとレオンヴァルドが考え込む。


「……それなら紳士協定が破られたのも納得がいくな。ドルクなら思いもつかぬだろう。」


「……そいつが出てきたら魔力は使えないって事ね。私の鍛えた脳筋部隊の出番だわ。」


アルダラがにやりと笑った。








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