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2 女子会


紅蓮は強制的にパジャマに着替えさせられてアルダラの部屋に連行された。

曰く、「女子会と言えばパジャマパーティーでしょ?」だ。


アルダラの部屋はファンシーだった。

フリルの付いたピンクの絹のカーテン。

真っ白でふわふわな毛皮のラグ。

そして白い大理石のローテーブルがその真ん中に鎮座している。

ファンシーとラグジュアリーが同居していた。


そのローテーブルにアルダラと紅蓮が向かい合う。

ピンク色の発泡ワインで女子会は始まった。


「グレンの無事を祝って」


「アルダラの無事を祝って」


「「かんぱーい!」」


しゅわしゅわと咽喉を滑って行く甘口の酒に紅蓮が目を細めた。


「ねぇグレン。あの時なぜ私を助けたの?」


アルダラが真顔で問いかける。

紅蓮がきょとんと首を傾げる。


「だってアルダラは大事な人でしょ?」


「そりゃまあ将軍やらせてもらってるけど。だからって王を戦線から離脱させてまで?」


「だってその王様の大事な人じゃん」


「そりゃまあ右腕の自負はあるけど。」


「右腕?小指じゃなくて???」


「小指……?」


アルダラが首を傾げる番だった。

思わず立てた小指と紅蓮の顔を代わる代わるに見つめ、ぶふっと噴き出した。


「やだ、グレン、私とレオを恋人同士だと思ってたの?やだ、ないない!やだー!」


アルダラがゲラゲラと笑い出す。


「……だって、仲良しだし……綺麗だから並ぶとすごくお似合いだし……」


紅蓮の声がだんだん小さくなっていく。


「うふふ、ありがと。でも綺麗すぎてレオには勿体無いと思うのよねぇ?」


「王様だってすごくかっこいいよ!顔も声も!」


「グレンはほんとにレオが好きよね」


アルダラが悪戯っぽく笑う。

紅蓮が目をしばたいた。


「そりゃ大好きだよ。『推し』だから。」


「……推し。」


紅蓮がこくこくと頷いた。


「あのちょっと苦み走ったお顔も、低くて甘いお声も、嗚呼、王様尊い……」


「えーっと、グレン?あなた私がレオの恋人だと思ってたのよね?嫉妬したり、しなかったの……?」


アルダラの翡翠の瞳がじっと深紅に当てられた。


「推しの大事な人はあたしにも大事な人だよ?推しの笑顔を守るのがオタクの使命だからね!」


「……oh……」


アルダラが額に手を当てた。


「こりゃ前途多難だわ……」


首を傾げる紅蓮のグラスをアルダラがなみなみと満たした。


「まあまあ、飲みましょ飲みましょ?」


こくりと頷いた紅蓮が一息でグラスを半分空にして、ナッツを口に放り込む。

カリリと小気味良い音で噛み砕き、


「アルダラは、どういう人がタイプなの?」


グラスに注ぎ返しつつ、問いかけた。


「見た目はレオも悪くないんだけど、いまいち筋肉が足りないのよねぇ。もっとこう……ムキムキが……」


「まさかの筋肉好き……だと……!?」


やがて月は窓を横切り、空の酒瓶が増えていく。

紅蓮が毛皮のラグに沈み、アルダラは一人、杯を重ねた。


すぴすぴ眠る赤毛に目をやると、ごろんと寝返りを打って何やらむにゃむにゃ口を動かす。


「……王様……尊い……」


寝言が漏れたその時、紅蓮がふっと掻き消えた。


アルダラが目を見開いて固まる。

そしてハッとしたように立ち上がった。

白いモコモコの室内履きがペタペタとレオンヴァルドの寝室へ向かう。


そぅっと扉を開けた。

レオンヴァルドの腕の中に、紅蓮はいた。

どちらもすよすよと、穏やかに眠っている。

アルダラは、二人を眺めてふっと笑った。

笑いながら、そぅっと扉を閉めた。

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