1 帰城
レオンヴァルドが手を握ると、紅蓮がそれを高々と掲げた。
魔女たちがヒューヒュー言った。
今まさにレオンヴァルドは戦利品だった。
魔女怖い。もう一度思った。
レオンヴァルドは紅蓮の手を振り解き、咳払いをして姿勢を正す。
「……帰還する。皆、世話になった。門を開く。」
重々しく告げると、両手を広げ、朗々と詠い始めた。
「王の名に刻まれし
古き盟約において命じる
門の番人よ
次元の番人よ」
美声を響かせるレオンヴァルドのマントが、クイっと引かれた。
視線を向けると紅蓮がキュッと握り締めている。
そして紅蓮はブンブンと手を振った。
「みんな元気でねー!テレポル!」
「待てーーーーーー!!!」
二人の姿が掻き消えて、レオンヴァルドの叫びだけが峡谷にこだました。
二人が現れたのは玉座の間だった。
紅蓮がえっへんと胸を張る。
「どう?王様。ちゃんと跳べたでしょ?」
「……問題はそこじゃない!我は王だぞ……ちゃんと門を開いて正規ルートで……」
レオンヴァルドがぷるぷると震えていた。
紅蓮が不思議そうに首を傾げる。
「一国の王が……まるで密入国……しかも自国に……何故だ、何故こうなった……」
レオンヴァルドががくりと膝を突く。
紅蓮が不思議そうに肩をぽんぽんした。
「こうして不徳を積み重ね……いつか呪いに堕ちるのか……」
レオンヴァルドが両手も床に突いた。
紅蓮が不思議そうに四つん這いの顔を覗き込んだ。
「王様、『呪い』ってなぁに?」
レオンヴァルドがバッと口を押さえた。
覗き込む深紅から逃れようと、うろうろと紫紺が彷徨う。
「王様ー?」
紅蓮が追いかけるように、レオンヴァルドの顔を至近距離で覗き込んだ。
「やだー、お邪魔だったかしらー?」
レオンヴァルドが弾かれたように声の主を振り返った。
アルダラだ。
「完璧なタイミングだ!よく来たアルダラ!」
「なぁんだ、つまらないの。おかえり二人共」
「アルダラ!」
紅蓮が飛びついた。
「良かった、元気そうだ!もう怪我は大丈夫なの?」
アルダラが目を細め、紅蓮の頭をぽんぽんと撫でる。
「竜人は丈夫なの。あれぐらい三日で治るわ。それよりグレン、あなたこそ。心配したのよ?」
「……心配かけてごめんなさい。」
しゅんとする紅蓮をアルダラがまたぽんぽんと撫でる。
「謝らないで?治って本当に良かった……」
翡翠が柔らかく細められ深紅を覗き込む。
「やだー、お邪魔みたいー。じゃ、俺はこれで!」
レオンヴァルドがシュタッと手を挙げて逃げた。
「あ、王様ぁ!」
追い縋るように手を伸ばした紅蓮をアルダラが引き摺った。
「まあまあグレン、今日はレオは放っておいて、私に付き合いなさいよ。女子会しましょ、女子会!」
「あーーーーーー!」
アルダラに引き摺られて廊下を進む紅蓮に、あちらこちらから声が飛ぶ。
「グレン殿おかえりなさい!」
「ご無事で何よりです!」
「もう尊死するなよー!」
ずるずる引き摺られながら、紅蓮はへらりと手を振った。




