5 風谷
ぴたりと喧騒が止んだ。やっと静かな時間が流れた。
五人の視線がレオンヴァルドにひたと当てられる。
「グレンの魔力が暴走した。『裏』では治療ができぬ。故にグレンを連れて『表』に参った。」
「暴走だって?この小娘は炎も出さずにスヤスヤ寝てるじゃないか!」
灰色がまた足をタンタンさせた。
レオンヴァルドは溜息を吐くと、ゆっくりと膝を折った。そして地べたに、ぺぃ!っと紅蓮を転がした
コロコロと転がり、紅蓮の目が開く。
「王様酷いよ!」
言葉と共に、ボッと炎が上がる。
魔女たちが息を飲んだ。
レオンヴァルドがスタスタと紅蓮に近づき
ひょいと抱え上げた。
炎は嘘のように、シュン、と収束する。
紅蓮は「尊い……スヤァ……」と目を閉じた。
「……おわかりいただけただろうか。」
魔女が揃ってこくこくと頷いた。
「風谷だね」
「風谷っしょ」
「風谷だな」
「風谷よね」
「とっとと跳ぶよ」
「「「「「テレポルタティオ」」」」」
五色の魔力がレオンヴァルドに絡み付いた。
ぐらりと視界が揺れて、瞬きの後には空気が変わっていた。
潮の香りは消え、薄く澄んだ空気がレオンヴァルドを包む。
そこは眼下に切り立った峡谷を望む崖の上だった。底の見えない深い谷間に、細く空気を切り裂くような、何かの鳴き声が響いた。
崖の上、山の斜面の僅かな平地に、その家はあった。こぢんまりとした、丸太造りの山小屋のような家。そのデッキに、ロッキングチェアで居眠りをする老人の姿があった。
魔女達に続いてレオンヴァルドもその老人のもとへと向かう。
「風谷ー!起きてー!」
「風谷ー、起きろしー」
六人……いや、一応七人……に囲まれて、風谷の魔女は「すぴー、すよすよ、んごごー」と寝息といびきを繰り返す。
「こんのぉ!起きろジジィ!!!!!」
ババァがジジィの毛布を剥ぎ取った。
ジジィの鼻提灯がパチンと弾けた。
「……なんじゃぁ?お前たち……」
小柄で長い顎髭を生やしたノームのような老人がむにゃむにゃと目を開ける。
「紅蓮が暴走した。」
「いつものことじゃろ」
「魔力が、よ?」
風谷の深緑の目が、やっとレオンヴァルドとその腕の中の紅蓮に向いた。
「おやおや、こりゃずいぶんと乱れとるのぅ、ひょほっ」
風谷はロッキングチェアを降りると、トコトコとレオンヴァルドの前に歩み寄る。
顎髭を撫で下ろしながら、ふむ、と頷いた。
「そちらの御仁は紅蓮の『ダーリン』かの?
離したくないんじゃろが、ちぃと治すでな、この辺に転がしてもらおうかのぅ。」
「ダっ!?断じてそのような者ではない!てぃっ!」
紅蓮が再びころころと転がされた。
「酷いよ、王様!」
言うと、ボン!と炎が上がった。




