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紅蓮の魔女  作者: 宵宮 詠
第5章
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4 魔女


レオンヴァルドは歩いた。

光の方へ。


時折、紅蓮がむにゃむにゃ言っては薄目を開け、再び「スヤァ」するのを無言で眺めながらレオンヴァルドは歩く。

それがレオンヴァルドにとって、たった一つの冴えたやり方だったから。


やがてぽっかりと眩しく開いた穴から、レオンヴァルドは地面へ降り立った。


猫を撫でていた夜天の手が止まった。

つけまつ毛をつけていた花守の手が止まった。

ダンジョンコアを愛でていた迷宮の手が止まった。

触媒を調合していた宵森の手が止まった。

聖句を書いていた祈りの手が止まった。

ロッキングチェアで居眠りをしていた風谷の鼻提灯が割れた。


そして次の瞬間、宵森が机を叩き立ち上がった。


(……紅蓮逃げて……)


夜天は思った。



レオンヴァルドの背後で、内側に吸い込まれる様に、音もなく穴が収束した。

紫紺の髪を撫でる風が、潮の香りを孕んでいた。なるほど、海沿いには結界柱がない。

さすが門の番人はわかっているなと感心しつつも、ここがどこなのかはわからなかった。


「グレン!グレン!起きよ!」


「……王様……!?……スヤァ……」


「「グレーーーーーーン!!!」」


叫んだ声が、なぜか二重奏に聞こえた。


「は?」


「え?」


紫紺と灰色の目が合った。


そこには、灰色のローブを身に纏った老婆が立っていた。頭から湯気が出そうに、顔を真っ赤に怒らせて。

レオンヴァルドの脳裏に、ふとドルクの面影が浮かんだ。


老婆が腰に手を当ててタンタンと足を鳴らす。


「ちょいと!あんた何者だい!?」


「わ、我は……」


「この小娘はなんでそこで寝てるんだい!」


「あ、いや、これは……」


「説教してやろうと思ったのにこれじゃできないじゃないか!」


「そ、それは我のせいでは……」


「とっとと起きな、小娘!!!」


それは激しく同意だった。

レオンヴァルドは遥か遠い目をした。

遠い目をして思った。

ここで怯んではならない。

なぜ自分はわざわざ「表」まで来たのか。

その使命を果たさねばならぬ。

頑張れレオンヴァルド。


「そ、其方は魔女!「紅蓮寝てるー、ウケるー」


「我は魔女に!「コスプレ!?美しい……」


「いや、魔女!「魔力が乱れている。」


「だから魔女!「『裏』の方かしら……?」


レオンヴァルドは囲まれた。

次々に現れた桃染つきそめと夜色と琥珀と白に。

バッと最後の声の主を見た。

白い魔女だった。


「そうだ。『裏』からこの娘を連れて来た。

何故其方にはそれがわかった……?」


やっと、やっと最後まで話せた……

レオンヴァルドはグッと拳を握った。


白い魔女は、小さく笑んで小首を傾げた。


レオンヴァルドは白い魔女を見つめ、その答えを待った。二人の視線が交差したまま、静かな時間が……流れなかった。


「それは何のキャラクターのコスプレですか?」


夜色の魔女が目をキラキラさせてレオンヴァルドを見上げていた。


「いやコスプレでは「てゆーかぁ、なんでレイヤーさんが紅蓮抱っこしてるのー?」


「いやレイヤーでは「なぜ紅蓮の魔力が乱れているのだ?」


「……俺の話を聞けぇぇぇえええええ!!!」


レオンヴァルドが吼えた。

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