5 暴走
いつまでそうしていたのかわからなかった。
やがて『風谷』が現れ魔力の制御を手助けしてくれた。その時は知らない爺さんだと思ったけれど。
風谷は風を操り紅蓮に炎を巻き戻していった。
「ちゃんと収めんと弟妹が焼けるぞい」
飄々と言われ殴りたくなった。
紅蓮は必死に炎を身の内に飲み込んだ。
最後の炎を飲み込むと、風が紅蓮を取り巻き、ふわりと抱きしめて消えた。
風谷は「ひょほほ」と笑っていて、やっぱり殴りたいと思った。
紅蓮が炎を収め、やっと弟妹を離した時、五つの光が現れた。
銀、白、琥珀、桃染、水色。
五色の光は紅蓮の周りをくるくると回り、
風谷が言った。
「紅蓮の魔女よ、『我、新しき同胞の誕生を寿ぎ、その福を祈る者なり』」
紅蓮は思い出す。
水色は、今はもういない魔女だ。
魔力を還し、塵になった魔女。
そっと手の平に視線を落とす。
目を閉じて魔力を操ってみた。
どうしても収まりきらない炎がゆらゆらと揺らめいた。
まあ、いいか。
ふと紅蓮は思った。
炎なんて戦場でしか役に立たないし。
全力を出せる事もそうないし。
王様の役に、立てたし。
……アルダラ、助かったかな……
「グレン!!!」
低音美声が聞こえたような気がした。
「グレン!!!」
もう一度聞こえた。
「王様!?」
紅蓮はバッと振り向いた。
炎が尾を引いた。
「グレン!」
レオンヴァルドが駆け寄って来る。
「来ちゃダメだ!」
紅蓮の声にその足が止まった。
「アルダラは?」
「命に別状はない。それよりお前……」
「良かった、王様の大事な人守れて。」
「……いやまあ……古い付き合いだし信頼できる部下だが……それよりお前……」
「兵達もできるだけ守ったよ」
「ああ、感謝する。それより……」
「王様の役に立てて……「いいから聞け!!!」
紅蓮は目を瞬かせて王を見た。
「そんな事よりお前だグレン!その炎はなんだ!収められないのか!?」
ふへ、と紅蓮は笑った。
レオンヴァルドは息を呑んだ。
目尻を下げて間抜けに笑う紅蓮が、
消えてしまいそうだと思った。
一足、踏み出していた。
「駄目だレオン、来るな!!!」
紅蓮が叫んでいる。
耳に入れながらもその足は止まらなかった。
あの炎を掴まえておかなければいけなかった。
レオンヴァルドが腕を伸ばす。
「駄目!!!」
(王様燃やしちゃダメ、絶対!!!)
手が届いた瞬間、シュン、と炎が消えた。
(推しへの愛って凄い……)
ふへ、と笑ったら視界が揺れた。
そんな紅蓮をレオンヴァルドが掻き抱く。
「グレン!!!」
(推しのハグ、だと……!?)
紅蓮は尊死した。
「グレン、死ぬな!!!」
叫んだレオンヴァルドは城へと跳んだ。




