2 ピーピー
紅蓮の魔女第4章2
2 ピーピー
両軍は王国軍の予定通り両翼から接敵した。
そして敵陣に、両翼での戦闘に目もくれず中央突破して来る一団がいた。
あまりにも予想通りの展開に、紅蓮は敵ながら心配になってくる。
騎兵数十名、魔導士が片手で数えるほどの一団。その先頭を駆けるのは赤鬼……ではなく、顔を真っ赤にした憤怒の形相のドルクだ。
鶴翼の最深部で受け止め囲む作戦だった。
が、この勢いを受け止め切れるのか。
そう心配になるほどのカッカぶりだ。
「小賢しい真似をしおってぇぇぇええ!!!
いざ尋常に勝負じゃぁぁぁああああ!!!」
素晴らしい声量だ。
紅蓮は沸騰してピーピーいうヤカンを思い出した。
「王様王様、ドルクさんピーピー言いながら突っ込んできまーす。」
「想定内だ。其方は予定通り動け。」
「あいあい♪」
紅蓮はドルク観察を離れて遊撃に回る。
大局を見ようと高度を取った時、ドン!と空気が震えた。紅蓮目掛けて魔導球が空を切る。
シュン!と剣を出す。構えた。
カキーーーーーーーン!
魔導球が左中間を割るライナーとなって戻っていく。
ちゅどーーーーーん!!!
魔導砲が一台砕け飛び、兵達が爆ぜた。
人差し指を高々と天へと掲げた紅蓮に色とりどりの魔法が殺到する。
紅蓮は再び剣を構える。
纏う炎がぶわりと膨れ上がる。
ブン、と薙ぎ払うとその全てが霧散した。
「魔女相手にその程度じゃあ効かないねぇ!」
不敵に笑うとそのまま空を駆ける。
「だから不用意に飛ぶなと!」
耳元で怒鳴り声が響いた。
キーンと耳が鳴り紅蓮は目を白黒させる。
下から氷の矢が放たれた。
ヒョロヒョロと回避して、矢の出所に手を翳す。
「【イグニス・ハスタ(突槍の烈火)】」
紅蓮の手の平に炎が生まれ、次々に槍の形となって地上へ殺到する。
その行く末を見もせずに、紅蓮は高度を上げた。
「王様ー!耳キーンってなるからおっきい声やめてー!できればこう、囁くぐらいで……」
「やかましい。」
「うぅ。とにかくちゃんと捌いてるし、あたしに魔法が集まれば地上のみんな楽になるでしょ?これから動きまーす」
「……応。」
少し不服そうな美声に紅蓮の顔が緩む。
そして眼下を見下ろすが、戦場は敵味方入り乱れており紅蓮の炎の出番はなさそうだ。
戦線から幾分離れた魔導砲を潰して回り、
王の元へと飛んだ。
「この、卑怯者の青二才めがぁぁぁあああ!」
ピーピーが聞こえてきた。
「就業時間内だ。問題なかろう?」
美声も聞こえてきた。
紅蓮は地上へと降り立ちながら、自軍の兵士と鍔迫り合いをしている敵の背を、袈裟懸けに斬って捨てた。
「姐御、恩に着やす!」
声に応えることなく紅蓮は駆けた。
目につく敵に一太刀浴びせ、立ちはだかる敵と斬り結ぶ。
上段に振りかぶった相手の胴を横薙ぎにし、そのまま駆け抜ける。
紅蓮の背後でジュ、と煙が上がり、肉の焦げた匂いが漂った。




