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紅蓮の魔女  作者: 宵宮 詠
第4章
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1 おこりんぼ


「罠が不発だった。という事はドルクはブチ切れる。」


昨日のレオンヴァルドの予言が当たった。

最前線の砦から魔力通信が入る。


「敵影を確認。およそ二時間後に接敵予定。」


紅蓮とアルダラが玉座の前に並ぶ。


「まさか昨日の今日とはねぇ。」


「あまり驚きはないがな。」


「おこりんぼさんなんだねぇ……。」


三者三様に軽く溜息を吐いた後、


「アルダラは歩兵を、我は騎兵を率いる。グレン、其方は我と共に参れ。」


「「はっ」」


レオンヴァルドの声に二人は膝を突いた。



「転移で行かないんだねぇ。」


整列した兵達を眺め紅蓮が口にする。

レオンヴァルドが隣で答える。


「二時間あれば跳ばずとも間に合う。

これだけの数を跳ばすとなると魔力も馬鹿にならん。温存だ」


そして兵が動き出すと、紅蓮はその言葉の意味を知った。


速い。


歩兵の大半が獣人族であるからだろう。

騎兵隊の前を砂埃を上げて疾走して行く。

紅蓮は王の馬の斜め上を飛行しながら舌を巻いた。


そんな紅蓮を見て王が笑う。


「あのアルダラに鍛えられているんだぞ?」


「……王様直属にしてくれてありがと……」


レオンヴァルドは更に肩を揺らした。



やがて砂埃の向こうに、居並ぶ兵達の影が浮かぶ。城からの一団がそこに合流した。

王が指示を飛ばす。砦組はそれで一個連隊を組むらしい。王は鶴翼の陣を命じた。V字型に並んだ歩兵の隊列。その両翼に騎兵が配置される。最深部、V字の角には王と近衛が控えた。

紅蓮はなるほど、と思った。


「もしかして、ドルクさんが顔真っ赤にして先陣切って駆けてくる?」


レオンヴァルドは頷く。


「あいつならおそらく。」


「ちょっと楽しみになってきた。」


紅蓮は王の予言が当たるのをワクワクして待った。そこに低い美声が告げる。


「グレンは遊撃だ。我の傍にいる必要はない。味方だけ焼かなければ好きに動け。」


紅蓮は胸がキュンとした。王の信頼に応えよう、推しの為に働こう。グッと握り拳を作る。

そして、「あ。」と小さく声を上げ、指先に深紅の魔法の光球を作り出す。


「王様、これ持ってて。」


言えば光球はふよんと王の元へと飛んで行く。


「それ通信用。呼べばすぐ駆けつける。迷った時には指示を仰ぐよ。」


「相分かった。」


王はその光を少し迷って肩口に乗せた。

ぐるぐると腕を回しても光は王にぴったりと寄り添っている。


「便利なものだな。同じような通信は出来るがこのように保持は出来ん。」


紅蓮はもじもじした。

褒められた事。

そして深紅が王を彩っている事に。


「ところでグレン。この色違いを、其方握り潰していなかったか?」


「……」


紅蓮は甘酸っぱい気分から現実に叩き戻された。そしてそっと目を逸らす。


王は深い溜息を吐いた。


「まあ良い。追求は後だ。

……グレン、前回とは異なる。魔導士もいれば魔導砲もあるはずだ。安易に飛ぶなよ?」


「……はい。」


素直にこくりと頷いた。後の追求の為である。


「敵影、目視可能です!!!」


そこに声が響く。

紅蓮は王を見る。

王はひとつ頷き返し


「全軍陣形を整えろ!前進!」





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