4 白と黒
そしてアルダラが兵を率いて現れた。
玉座へ揃って礼を落とし、紅蓮へと向く。
「お待たせ。ちょうど良さそうな面子、選んで来たわよ。……って、あら。紅蓮は陛下の直属扱いなのねぇ。」
紅蓮の服装を見たアルダラが、面白がるような笑みを浮かべて言った。紅蓮は首を傾げてレオンヴァルドを見遣る。
レオンヴァルドは一つ、頷いた。
「我の『食客』という扱いだ。だが、作戦時はアルダラの指揮下に入るぞ。」
「わかったわ。」
二人のやり取りを聞いて紅蓮は目をぱちくりとさせる。苦笑した王が口を開く。
「グレン、其方……契約書を碌に読まずにサインしたのか?」
紅蓮がぐっと言葉を詰まらせる。
「わーい、これで合法的に毎日王様を摂取できる♪」などと考えてウッキウキでサラサラっとサインなど……した。確かにした。
紅蓮は、そっと目を逸らした。
「そ、そんなこと、ないもん……」
(そんなこと、あるな)
広間の総意であった。
そんな紅蓮を他所に、アルダラはテキパキと組み分けしていく。
多種多様な面々に、紅蓮は多様性という言葉を思い浮かべる。
飛べる者と跳べる者と火力。
二人三脚が主ではあるが中には三位一体型もいる。
紅蓮は思った。
(親亀の上に小亀が乗って、小亀の上に孫亀が乗って……)
アルダラがそれらを更に三班に分けたところで、斥候が戻ってきた。
「上空からの偵察においては、障壁などの防御は視認されませんでした!」
「ご苦労。」
アルダラと紅蓮は顔を見合わせてにやりと笑う。レオンヴァルドだけが小さく首を傾げる。
深紅がそんな紫紺に愉快そうに向けられた。
「もし目に見えない防御壁があったらあたしが破るし、下手に触って警戒されるよりこれぐらいで良いんだよ。」
ふむ、と頷きながらも紫紺は懸念の色を変えずに問う。
「……グレン其方……違えずに跳べるのか?」
紅蓮の喉から、ぐぅっと妙な音が出る。
「ちょっと王様っ!座標あればちゃんと跳べるからね!?……あれは、座標計算をちょっと間違えただけだから!」
(どう間違えたら『裏』に出るんだ……)
広間の総意アゲインであった。
「と、とにかく!タイミングを合わせて転移!
上空に出たらあたしがすぐに合図を出すから
一斉に攻撃!万が一障壁があった場合、一旦
上空へ退避。あたしの転移を待て!」
「「「応!」」」
全員が声を揃え、紅蓮は「全員?」と首を捻る。
「ちょっと待った、なんで『将軍』が返事してるのさ!?」
「え?わたし1人で『飛べる』し『跳べる』し?」
「……障壁も破れるだろうね。」
「そうね。だから最適な面子じゃない?」
「駄目。アルダラはお留守番。」
「えーーーーーーー」
アルダラはレオンヴァルドを見る。
レオンヴァルドは紅蓮を見た。
「あのさー、こんなヒットアンドアウェイの
撹乱作戦に、『将軍様』が出ちゃ駄目だよ。
格ってもんがあるでしょ?
こういうのは、あたしの役割だ。」
レオンヴァルドがひとつ頷く。
「……アルダラ、今回はグレンに理があるな。
其方は城に残る。良いな?」
「……はっ。承知致しました。」
アルダラは玉座に膝を折ってから、
むぅ、と頬を膨らませてグレンを見た。
「……グレンのお手並み拝見したかったのに」
「……あたしとアルダラは一緒の班にならないでしょ?お互い単騎で行けるのに。」
翡翠の目が、スっと細まり深紅に当てられる。
深紅はそれを真っ直ぐに受け止める。
深紅は、「なるほど」と頷いた。
「わかった。手を出さないなら、一緒に行こう。敵さんに目視されない上空から、見張ってればいいよ。」
「……聡いわね、グレン。」
派手に苦笑してアルダラが続ける。
「ごめんね?わたし、グレンの事は好きよ?」
紅蓮は笑って首を振る。
「アルダラはあの戦さにいなかった。あたしを信じ切れないのは当たり前だよ。
それぐらい慎重な方があたしも信用できる。」
アルダラは苦笑を深め、レオンヴァルドが眉を上げた。
そんな二人に紅蓮は肩を竦めて続ける。
「だいたい『アットホームでみんな仲良しな職場でーす』って言ってるところに限って、なあなあでブラックってのが相場だからね。」
広間の数名が首がもげるほど頷いた。
もげていない者の総意は(雇用契約書読まないくせに)だった。
紅蓮はコクコクと頷く頭達を見て、
レオンヴァルドの治世のピュアッピュアさを改めて知る。さすが王様、と玉座に熱い眼差しを送る。
レオンヴァルドは重々しく頷いた。
紅蓮がニコニコと頷き返す。
どちらの声への賛同だったのやら、とアルダラは思った。




