3話 純白
「時間外、労働……」
紅蓮が呆然と繰り返す。
王は大きく頷いた。
「定時は9時5時だ。」
紅蓮の顎が落ちた。
「まあどうしてもと言うなら時間外手当は出すが、こちらが一線を越えれば向こうからもやり返される事になるぞ?」
「……反乱軍も、9時5時……?」
紫紺色の頭と漆黒の頭がこっくりと頷いた。
「……oh……」
紅蓮が呻いた。
「……そうだった……『王様』に非番のある世界だった……」
「我にも休む権利はある。
あ、アルダラ。お前の休暇届け、それが目的だったなら取り下げておけ。出張扱いにしろ。」
……純白だ。ピュアッピュアだ。
紅蓮は自分が「表」の世界で汚れっちまった悲しみを知った。
「……わかった。作戦変更だ。
『THE・夜陰に乗じないで空爆奇襲大作戦』」
「その心は?」
王が乗った。コンプラクリアだ。
「夜陰に乗じられない分、飛べる面子と転移ができる面子が必要だ。転移で拠点上空に出る。上空から一斉攻撃。そして逃げる。
障壁がある場合あたしが各拠点を転移して穴を開けて回るよ。そうだな、とりあえず三か所ぐらいやっとけば充分じゃない?」
王と将軍は唸った。
「……それは……容赦な「有効だわね。」
アルダラと紅蓮はがっちりと手を握り合った。
日が明けて、早速作戦実行と相成った。
紅蓮は王の物と良く似た黒い軍服に黒いマントを羽織る。翻る裏地は燃え立つような深紅。
紅蓮の色だ。
朝、いつもの服に着替えようとするとアラクネ達がこの一式を運んできた。
驚く紅蓮に「支給品だ」と告げる。
(いや、どう見ても一点物だろう)と目を白黒させる紅蓮を、アラクネ達がポンポンと剥き、パッパと着付けて行く。
「裾が長いとうっかり焦がしちゃうことがあるんだ」と紅蓮が訴えると、燃えにくいアラクネ生地のマントに、「不燃の魔法陣」までサクサクとその場で刺繍してくれる。
おまけに片方の耳元の髪まで編み込みにしてくれて、アラクネ達は満足そうに退室して行った。再現性は、ない。
「グレン、来たか。」
紅蓮が玉座の前に姿を見せた時、王は満足そうに目を細めた。
「こんな立派な支給品、ありがとう……」
「問題ない。其方の雇用契約には衣食住の提供も含まれているからな。」
やはりここは、ピュアッピュアの純白の世界だった。




