表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮の魔女  作者: 宵宮 詠
第3章
PR
14/25

1 不可侵


アルダラはスッと立ち上がった。


「さ、堅苦しいのはここまでで良いでしょ?

早く紹介してよ、噂の魔女殿を。」


言うと、バシッと王の肩を叩き、紅蓮ににっこりと笑いかける。

アルダラの手を追いかけていた深紅の瞳が、鱗と同じ深い翡翠の虹彩に、縦長の黒い瞳孔に、吸い込まれそうになる。

そんな紅蓮の肩をポンと叩いて王が口を開く。


「グレン、我が軍の将、アルダラだ。

今後其方もアルダラの指揮下に入る事となる。

アルダラ、烈火の魔術師であり紅蓮の魔女、

グレン殿だ。此度の戦では獅子奮迅の働きを見せてくれた。」


「城中で噂になっていたわ?よろしくね、グレン殿。」


アルダラがすっと手を差し出す。

ひんやりとしたその手を握り、紅蓮はぺこりと頭を下げた。


「さて。」


言いつつ王がソファに腰を下ろす。

途端にふよふよとコーヒーカップが運ばれる。

一つのカップに二つの光が「よいしょよいしょ」と声を合わせて。


アルダラが王の向かいに座り、紅蓮は束の間逡巡した。王がカップを二つ受け取り、紅蓮を目顔で呼ぶ。

ホッと力を抜いて、王の隣にするりと滑り込む。そしてカップを両手で包んだ。


「で、何故竜人族は反乱軍と協定を結んだ?」


アルダラはカップに長い睫毛を伏せながら

コーヒーを一口飲み下す。


「……おそらく何らかの切り札を手に入れた、と見るのが正しいでしょうね。

それが何かはわたしには教えてもらえなかったけれど。


族長と長老が奴等と接触すると聞いて慌てて帰ったのだけど、既に協定は結ばれた後だった。

そしてわたしの不在は向こうに筒抜けだったみたいね。ごめんなさい、レオ。」


考え込む紫紺とそれを見つめる翡翠の間を

深紅がキョロキョロと彷徨う。


「……レオ……?」


おずおずと紅蓮が口にすると、

二対の瞳が驚いたように向けられた。


「レオンヴァルド。我が名だ。」


「ちょっとレオ、名前も教えてなかったの?」


「レオンヴァルド……」


名前もかっこいいな、ぼんやり思う紅蓮の頭を、王がノールックでぽんぽんと叩いた。


「切り札か。長く鳴りを潜めていて突然動いた事にも筋が通る。そして、竜人族に奴らと通じている者がいる、と考えるのが妥当だな。」


アルダラは頷く。


「先王の『表』への侵略時、竜人族の中にも賛同者はいたわ。表立って反乱軍につけばこうなるから、潜んでいるのでしょ。腰抜け共め。」


アルダラは切り取られた角の痕をちょいちょいと指差した。


「……痛く、ないの?」


紅蓮の口からほろりと言葉が零れた。

アルダラは翡翠を見開き深紅に向ける。

それがふっと細まると、口元に笑みが浮かぶ。


「大丈夫よ。痛覚はないの。追放の証以外に特に影響もない。まあ、ただの飾りよ。

……ありがとう、グレン。わたしの不在を、守ってくれた事も。」


紅蓮がふるふると首を振ると、またぽんぽんと頭を撫でられる。

おずおずと見上げるが、王の視線はそこにはなかった。


レオンヴァルドの視線はただテーブルの上を見つめていた。そしてぽつりと言った。


「不可侵協定……で幸いだったのかもしれんな。

手を組まれると厄介だった。」


アルダラがすっと片眉を上げた。


「そんなことになったら、郷を焼くわよ。」


迷いのない言葉が、眩しかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ