5 跳んじゃった
「王様ぁぁぁっ!」
紅蓮が現れたのは、薄暗い部屋だった。
キョロキョロと辺りを見回し首を傾げる。
知らない場所へ座標計算もなく?と。
その時、紅蓮の下で何かが蠢いた。
ハッと視線を落とす。
呻き声と共に、布団の下から紫紺の頭が覗く。
「王様!王様!大丈夫?苦しい?持ってきたよ!解毒剤!」
「……重いんじゃぁああああ!」
王は吠えた。
ガバッと身を起こす。
紅蓮がコロコロと床へ転がった。
「……。」
紫紺は無言で深紅をじろりと睨みながら、寝台に腰を下ろした。
深紅はぷるぷると震えながら正座した。
「なぜここにいる。ここは我の私室だぞ。」
重低音が紅蓮を震わせた。
ポジティブな方向で。
「ご、ご、ごめんなさいっ!!!」
紅蓮は平伏してバッと水と解毒剤を献上した。
「お、王様もこれいるんじゃないかと思ったんだ!
どっかで屍になってたらどうしようって思ったんだ!
そしたら……」
王はおもむろに献上品を受け取り一気に呷った。
「そうしたら?」
「……気がついたらここにいた……」
「……no……」
紅蓮はぷるぷると震えながら、眉間を押さえる王を上目でこっそり盗み見た。
寝乱れた髪、無造作に肌脱けられた夜着の胸元。眉間の皺さえ苦み走っている。
「……ぅっ。」
紅蓮は鼻と口を押さえた。
出てはいけないものが出そうだった。
涎とか鼻血とか。
「あ、いや、泣くな!……其方が善意で動いた事は理解した。だからほら、泣くでない!」
(良い人だ……)
紅蓮は思った。
「……とは言え。もう二度とするな。良いな?」
「……が、がんばります……」
「いやいやいやいや、そこはキッパリ『もうしません』と言うところだろう!?」
「……だって無意識だったから……」
「駄目!絶対!二度としない!おちおち風呂にも入れない生活絶対嫌だからな!?」
「……善処します……」
王が泣きたい気持ちになった時、コンコンとノックが響いた。
「お取り込み中すみません……」
「取り込んでなどおらん!なんだ!」
「将軍が休暇よりお戻りになられました。
早急にお会いになりたいとの事です。」
王の背がスッと伸びた。
「……執務室で待たせよ。直ぐに行く。
グレン、お前も来い。アルダラに会わせる。」




