4 つわものどもが夢の跡
薄らと差し込む朝の光に、紅蓮はパチリと目を開けた。この裏の国は何故かいつも薄曇りで、こんな朝にはありがたいと思う。
昨夜のどんちゃん騒ぎのお陰で気怠さが残る紅蓮は、シャワーですっきりさっぱり、艶ピカになった。
「さあ、朝の王様を摂取しなくっちゃ♪」
ドアノブはもう固くない。ガチャリと開けて、右見て左見て、るんたるんたと広間へ向かう。
広間の入り口が見えた時、紅蓮の足が止まった。
深紅の瞳がすぅっと細まる。
禍々しささえ感じる、澱んだ気配がそこから漏れ出ている。
紅蓮はるんたを封印して、足音を潜めた。
壁に沿って入り口へと近づく。
一歩手前で息を静かに吐き出す。
シュン、と剣を呼び出しながら身を翻し、
広間に対峙した。
そこには……
累々と横たわる兵達の姿が、あった。
呻き声、水を求めて伸ばされた手、許しを乞う声。
「もう、許して…… もう、飲めません……」
「酒臭っ!!!」
紅蓮は叫んだ。
気を取り直し、紅蓮は踏み込む。
酒精の臭いと倒れ伏した者達の怨嗟の呻きが、瘴気のように立ち込めた魔窟に。
見れば各テーブルの上に水と解毒剤が用意されている。
つまり転がっているのは、そこまで辿り着く事もできない自業自得の屍達だ。
(あの優しいメイドさん達なら甲斐甲斐しく介抱してあげそうなものなのに)
思いながら紅蓮は肩を竦めて水と解毒剤の瓶を適当に転がしてやる。
魔窟の中に、王はいなかった。
紅蓮はこてりと首を傾げる。
そして、バッと水と解毒剤を掴んだ。
(王様どっかで倒れてたらどうしよう!)
「王様!どこーーーーー!?」
叫んだ瞬間紅蓮は消えた。深紅の残像を残して。




