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第一章 そうちゃんって、気づいたらいるよね。

また、季節は過ぎて、冬が来た。


今日は、うちでそうちゃんとお留守番だった。


二人でゲームをしていると、

玄関のドアが開く音がした。


「ただいまー」


ママとりっくんが帰ってくる。


ママの手には、一枚のハガキ。


それを見たそうちゃんが、すぐに言った。


「それ、同窓会のやつだろ?」


「うん、そうみたい〜」


ママはコートを脱ぎながら答える。


「俺のところにも来てた。」


そうちゃんは立ち上がって、

ママの横に並んだ。


少しだけ距離を空けて、

ハガキをのぞき込む。


「行く?」


ママは、うーん、と小さく唸った。


「んー。いや、私はいいかな〜」


「でも、あおちゃんとか来るらしいよ?」


「青葉も帰ってくるの?

……それは会いたいなぁ。」


ママの声が、少しだけ弾む。


「行こうよ」


そうちゃんは、軽い調子で言う。


「でも、実家に預けて飲み会は……

ちょっと行きにくい」


「他にも子ども連れてくる人いるみたいだし、

すーとりくも連れてけばいいじゃん。

俺もいるし」


「……そう?」


ママは、少しだけ笑った。


その顔を、そうちゃんはじっと見ていた。


私は、ゲームのコントローラーを握ったまま、

二人のやり取りを聞いていた。


同窓会の日。

私とりっくんはいつもより少しオシャレ。

私はルンルンだった。

りっくんは、ママに無理やりあげられた

前髪が変だって怒っている。


ママも、オシャレだった。

ママってちゃんとお化粧すると

ちゃんと綺麗なんだね。

って言ったら、デコピンを食らった。


外に出ると、ちょうどそうちゃんが

歩いて来てた。

私とママはそうちゃんに手を振った。

りっくんはまだ怒ってる。


「りく、かっこいいじゃーん!」

と、そうちゃんが茶化した。

りっくんはもっと怒った。

ママがそうちゃんに、

「余計なこと、言わない!」

と、デコピンを食らっていた。

痛がりながら、デコを摩る

そうちゃんが私を見て、

ペロッと舌を出した。


お店に着くと、

私と同じ歳の子が2人と

一つ下の子が1人

りっくんと同じ歳の子が1人居た。

私達はあっという間に仲良くなり、

子どもの机でジュースを飲んだり、

ポテトを食べたり、

持って来たオモチャで遊んだ。


「すっちゃん。ママ、おトイレ行くけど一緒に行く?」


私は神経衰弱のカードをめくりながら言った。

「ううん、いかなーい」

「りっくんは?」

「りっくんも、いかなーい」

「じゃあ、ママ行ってくるからね」

「「はーい」」


ママはそう言って席を立った。


カードをそろえながら、

私はなんとなく、大人たちのほうを見た。


「総一!お前なんで楓と一緒に来たの?」


知らないお兄さんの声が、大きい。


「別に。家近いから。」


そうちゃんは、いつもの声。


「付き合ってんの?」


「ない。」


「あったよなぁ〜、昔からお前らそういう噂。でも結局なかったもんな〜」


笑い声。


「楓とはそういうのない。」


「楓は美人だけどさ〜、さすがに……

バツイチ子持ちは、もうなぁ〜」



ドン。



大きな音がした。


私はびっくりして顔を上げた。


そうちゃんのビールが、グラスのふちからこぼれていた。

テーブルの上で、泡が揺れている。


さっきまで笑っていたお兄さんが、黙っている。



「お前。殴られたいか?」




低い声だった。


私はカードを握ったまま、動けなかった。



そうちゃんって……


怒るんだ。




私がそうちゃんの怒った姿を見たのは、

これが最初で、最後だった。


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