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第七章 そうちゃんって、優しいね。

あの出来事から、1週間が経った。

 あれ以降、大輝から連絡はない。飽きられてしまったのかもしれない。

 不安な気持ちに気づかないふりをして過ごす日々。

 元気がない私に、咲良と百合が気を使って、この間行けなかったワッフル屋さんに誘ってくれた。


 結局、食べられなかったしな。


 そう思って、一緒に行く事にした。

 すると、久保宏大が靴箱のところで待っていた。咲良が誘ったらしい。

 私たちと久保宏大と4人でワッフル屋さんに向かった。

「あれ以来、大丈夫?」

 歩きながら、久保宏大がコソッと話しかけてきた。

「んー。あんまり大丈夫じゃないかも…」

 笑って見せたけれど、引き攣っているのが自分でも分かった。


 ワッフル屋さんに着き、店内に入ると、「すみれ!」と声がした。

 声の方を見ると、大輝と、向かいの席に美香子が座っていた。


 なんで?


 大輝は私の方に歩いてきて、言った。

「ちゃんと謝りたくて、待ってた。」


 謝りたくて、待ってた…?

 謝りたいのに、美香子さんと一緒に待ってたの?


 すると、大輝の後ろから美香子が歩いてきた。

「ごめんね、すみれちゃん。なんか私のせいで、だいちゃんと気まずくなってるんでしょ?

 大丈夫!気にしないで!だいちゃんとは全然そんなんじゃないから!」

 そう言いながら、美香子はまた大輝の肩を手でポンポンと軽く叩きながら言った。


 なにそれ。

 何にも分かってないじゃん。

 それで謝ってるつもりなの?


 言いたい事はたくさんあったのに、言葉がうまく出てこない。

 目が熱くなっていく。


 泣きたくないのに。泣きそうだ。

 あぁ、なんかもう、すごい嫌だ。


 すると、

「なにに対して謝ってるんですか?」

 久保宏大が言った。

 全員が久保宏大に視線を向けた。

「橘高が何に傷ついたか分かってないですよ。」

 久保宏大が大輝に言った。

「ことの発端は彼女ですよね?一緒に来るって…橘高の気持ち考えました?」

 私の目から涙が溢れた。

 そんな私の顔を見て、大輝が咄嗟に私に手を伸ばした。

 すると、久保宏大が私を引き寄せた。

「何も分かってないのに、触らないであげてください。米田、古村。帰ろう。」

「そうだね。」百合が返事をして、私達は店を出た。

 出る瞬間、大輝の顔がチラッと見えた。

 すごく悲しそうな顔をしていた。


 悲しいのはこっちだよ…




 電車に揺られながら、ボーッと窓の外を眺めた。夕日で空も、雲も、田んぼも、オレンジ色。

 頭の中で、店を出るときの大輝の悲しそうな顔がチラつく。

 仲直りしたいのは、私も同じはずなのに。大輝なりに考えて美香子さんを連れてきたのかも知れない。「謝りに来てくれてありがとう」そう言えたら良かったのか。

 でも、そうしたら私のこの気持ちはどう消化したらいいのだろうか。

 一定間隔で、流れていく電信柱を目で追いながら考えた。

 なんだか真っ直ぐ帰る気になれず、家の近くの公園に行った。ここの公園の自販機の中身は、昔からずっと変わらない。ココアを買ってベンチに座った。

 この公園で、ココアを買って、このベンチに座る。それはいつも大輝と一緒だった。


 パキッ。

 缶の爪の割れる音が誰もいない公園に響いた。

 買ったけれど、たいして飲みたくない事に開けてから気づいた。

 何気なく、横に目をやった。いつも大輝が座る左側。

 何がどう変わってしまったのか分からない。けれど、私も大輝もあの頃とは違う。それが今の私達にどう関係しているのかも分からないけれど、今までの喧嘩とはどこか違う。そんな気がした。

 

 〜♪

 ポケットの中で、携帯が鳴った。スマホの画面を見ると、大輝だった。一言、『ごめん。』と書いてあった。私はそれを見て、スマホの電源を落とした。


 結局、一口も飲まなかったココアは、私の手の中で冷たくなっていった。


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