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第一章 そうちゃんって、気づいたらいるよね。


季節は進んで、私は保育園を卒園した。


卒園式の日。


式が終わって、ママとりっくんと三人で外に出ると、

門の前にそうちゃんが立っていた。


いつものジーパンとトレーナーじゃない。

白いシャツに、きれいなジャケット。


ほかのお友達のパパと、同じような格好だった。


私は、うれしくなった。


でも、少しだけ思った。


どうして、式には来なかったの?


その言葉は、胸の中にしまったまま、聞かなかった。


 


そうちゃんは、大きなカメラを構えた。


ママと私とりっくん。

三人で並んで、写真を撮ってくれた。


「はい、笑って」


カシャ、という音。


ほかのお友達のパパが、声をかけてくれた。


「撮りましょうか?」


四人で写れるように。


でも、そうちゃんは笑って首を振った。


「大丈夫です」


どうして?


四人で撮ったほうが、いいのに。


そう思ったけれど、

それも、聞かなかった。


その日の夜、私たちはそうちゃんと一緒にご飯を食べた。

お寿司だった。


「お祝いだから」


そうちゃんが言った。


家に帰ると、ケーキもあった。

これも、お祝いらしい。


楽しい一日だった。


 


お風呂から上がって、歯を磨き終わると、

そうちゃんが言った。


「そろそろ帰るね」


玄関までお見送りをして、

私とりっくんは寝室へ行った。


 


どれくらい経ったのか分からない。

ふと、目が覚めた。


トイレに行こうとして廊下に出ると、

リビングから小さな声が聞こえた。


ドアの前で、足が止まる。


ママの声。


そして、さっき帰ったはずの、そうちゃんの声。


 


「ごめん。再婚はしないって決めてる。」


ママが言った。


少し、間があった。


「……そうだよなぁ。

楓が、それで苦労したんだもんな。」


そうちゃんの声は、いつもより静かだった。


「ごめん」


ママが、もう一度言う。


「なんとなく、分かってた。」


 


聞いちゃいけない話のような気がした。


私は、そっと寝室に戻った。


しばらくして、廊下を歩く足音。

玄関で止まる。


「また来る。おやすみ」


小さな声。


バタン、とドアが閉まった。


 


暗い天井を見つめながら、

私は思った。


そうちゃんは、

ママに振られたんだな。


それからしばらく、そうちゃんは来なくなった。


……来なくなった、というより、

用事があるときだけしか

来なくなった。


お米を届けに来たり、

野菜を置いていったり。


少し話して、帰る。


ママは「忙しいんだよ」と言った。


私は、ふうん、と思った。


 


それでも、私の入学式の日。


校門の前に、そうちゃんは立っていた。


卒園式のときと同じ。

少しきれいな服を着て。


ママは、そんなそうちゃんを見て、

嬉しそうで、でも少し悲しそうだった。


その顔を、私は忘れない。


写真はやっぱり、三人だった。


私と、りっくんと、ママ。


そうちゃんは、カメラの向こう側。


「撮りましょうか?」と言われても、

首を振った。


そうちゃん、どうして来たの?

なにしに来たの?


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