第一章 そうちゃんって、気づいたらいるよね。
その日、そうちゃんは朝から来ていた。
ママは夕方までお仕事。
いつもなら、おばあちゃんの家に行く。けれど、その日はおばあちゃんがいなかった。
「慰安旅行?らしいよ」
ママが、ちょっと困った顔でそう言っていた。
私とりっくんは、まだお留守番ができない。
おじいちゃんと二人きりでいたこともない。
おばあちゃんがいない日に、おばあちゃんの家で過ごすことはなかった。
おじいちゃんとママは、あまりお喋りをしないからかな、と私はなんとなく思っていた。
ママが「どうしようかなぁ」とつぶやいたとき、
「俺、しようか?」
そうちゃんが、当たり前みたいに言った。
私とりっくんは、顔を見合わせて、ぱっと明るくなった。
そうちゃんとお留守番。
それだけで、もう特別だった。
ママは少し安心した顔をして、すぐにお仕事へ向かった。
そうちゃんは、いつもより少し遠い公園に連れて行ってくれた。
遊具がたくさんある公園。
シャボン玉をして、フリスビーをして、
長い滑り台も一緒に滑った。
お昼ご飯はハンバーガー。
ママはあんまり食べちゃだめって言うけど、シェイクも買ってくれた。
しかも、私とりっくんに一つずつ。
最高だよ。そうちゃん。
家に帰ると、りっくんはすぐにお昼寝をした。
私はお絵描き。
そうちゃんも、隣に座った。
そうちゃんは、絵が下手だった。
猫も犬もトラもライオンも、ふにゃふにゃの棒みたいな線で描く。
どれも同じに見える。
唯一、ゾウだけは分かった。
顔みたいな所から、長い線が一本、伸びていたから。
そのうち、ママが帰ってきた。
「何したの?」と聞かれて、私は今日のことを全部話した。
公園のこと。シャボン玉のこと。長い滑り台のこと。
そして、そうちゃんと描いた絵を見せた。
ママは、そうちゃんの絵を見て大笑いした。
「すっちゃんの方が上手!」
そう言って、私の髪をふわっと撫でた。
そうちゃんは真面目な顔で、
「これが猫で、これが犬で」と説明している。
それが、なんだかすごく面白くて、
すごく楽しかった。
……あ、シェイクを飲んだことは、内緒だよ。




