第六章 そうちゃんって、頼りになるよね。
次の日、おじいちゃんのお葬式だと言うのに、外はカラッと晴れ、清々しい天気だった。
いっそ大雨でも降ってくれたら、どんよりとした気持ちにもなれるのに。なんて考えてしまった。
お葬式が終わり、棺桶は霊柩車に乗せられた。
ファーーーっと霊柩車から、大きなクラクションが鳴った。
周りがみんな手を合わせたので、それに合わせて私も手を合わせた。
遺影を持ったおばあちゃんと一緒に、霊柩車は葬儀場を出て行った。
「車に乗って。火葬場行くから。」
ママに言われるがまま、車に乗り、火葬場に向かった。
火葬場には、昨日ママに嫌味を言っていたヤエちゃんと言うおばさんも来ていた。
おじいちゃんに最後のお別れをし、棺桶は火葬炉の中に消えて行った。
「終了まで1時間半ほどかかります。待合室の方でお待ち下さい。」
係の人に案内され、待合室の椅子にママとりっくんと座った。
すると、ヤエおばさんがママの前に立った。
「お葬式お疲れ様でした。あとはやっときますので、お帰りになられて結構ですよ。」
腕を組んで、彼女は言った。
そこにおばあちゃんが入って来た。
「一応、娘ですから。最後まで居させてあげてください。」
「おじさんは楓さんのことを娘とは思ってなかったと思いますよ。」
彼女はそう言い、横目でおばあちゃんを睨んだ。
ママは立ち上がり、ヤエおばさんと同じように腕を組んで言った。
「知ってます。娘と思われていない事くらい。では、お言葉に甘えて帰らせていただきますね。」
ママは私達に「行くよ」と声をかけ、出口の方に歩き出した。
「お兄さんはあなたを娘と思っていなくても、何不自由なく育てて来たでしょ?感謝の気持ちがあるなら、最後までいるべきよ。」
橋口のおばあちゃんが、ママに言った。
ママは振り返った。
「何不自由なく…。そうですね。食べ物に困った事はなかったです。でも、入学式にも卒業式にもあの人は来たことはない。義務教育以上の教育が受けたいなら、自分で受けろ。そう言われ高校は奨学金をもらいました。大学は、特待生で一部の学費免除と奨学金で行きました。自分で全て返しました。高校からバイトをして、自分のお金は自分で稼ぎました。ヤエさんにはお年玉や誕生日のプレゼントがあっても、私にはなかった。何不自由なくとは、何を指しているのでしょうね。」
ママは、扉を開け待合室を出て行った。
私とりっくんも立ち上がった。
私が扉の方に歩いていこうとすると、りっくんが動かない。
振り向くと、りっくんがゆっくり話し出した。
「皆さんにとって、祖父がどんな人だったのか。僕たちには分かりません。けれど…」
りっくんは、おじいちゃんの遺影を指差した。
「祖父が僕たちにあんな風に笑った事はないです。母に対しても、きっとずっとそうだったんだと思います。
……祖父は母の父親になる努力をした人なのでしょうか。」
りっくんはそう言うと私の方を振り返り、扉に向かって歩き出した。
私も、軽く会釈をし待合室を出た時、おじいちゃんが亡くなってからずっと胸の中にあった、言葉にできない気持ちが無くなっていた。
おじいちゃんは…ママの父親になる努力をしなかったと思う。そして、私達のおじいちゃんになる努力も。
そう言う事なんだ。




